【sm】真夜中、星雲旅行24時【snr】 (ページ30)

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彼女がちゃんと寝たことを確認して、操縦席に腰を下ろした。
既にこのロケットは、また一層の砂が落ちきったことで、"目的を達成した"と認識して次の目的地へと出発していた。

その、一層の砂が落ちた砂時計を見て。
センラが先程、俺に対して教えてきた、俺にとっては少し余計な豆知識を思い出す。

Aの砂時計は、彼女の出身の日本の、12か月分しっかりと定められた伝統色で構成されているらしい。
この間、桜が舞う星で落ちた砂は、花舞小枝(はなまいこえだ)という色らしい。

全てを見透かされているようで嫌になったのは、先程落ちたばかりの砂の色。
深い紫色、まるで俺の髪や瞳の色と同じような色で。

名前は────、初恋薊(はつこいあざみ)、というらしい。

狙ったような、その名前に。

少し自嘲的な笑みが零れる。
どうせ別に、今の俺を見ているとしたらオペレーターぐらいだし。不審がられることは無いだろう、と思っても口元に手を当てながら。

操縦席の大きなモニターは、いつも通り自動運転モードに切り替わっていることと、次の目的地が"α Camelopardalis(アルファ・カメーロパルダリス)"であることを示していた。

毎度彼女の願いをかなえる度に、目標を達成する度に星を移動するのはどうにかならないのだろうか、と少し思いつつ。
星にもリソースの限界はあるのか、なんてどうでもいいことを考えながら。

…そうだな、彼女の周りには"彼女の方が(・)必要としていなくて"、"彼女のことを(・)認識していなかった"としても。
あまりにも、彼女が"脅威"として認識していた人間の数が多すぎた。

俺が彼女に対して好意を抱く前の話だから、特別な話ではないが。
実際、クラスメイトの中にも脅威になりえる人間がいた為、センラと相談して勝手に事実を捻じ曲げた例だってある。

────結局、今回の彼女の願いは何だったのだろうか。
センラが洞窟に迎えに来てくれた際、彼は自分の分と、探してくれた俺の分の光を灯すペンダントを持っていた。

光が灯ったのは迎えに来る少し前だったらしいから、その前に"願い"は俺と一緒にいた際に叶えられたはず。

…それが何かは、断定できないが。
ペンダントが示した、砂時計の層が落ちたことを。
その砂時計、落ちた初恋薊の砂を見て。

まるで、恋に落ちたと言っているようだと。愛おしい彼女のことを想って、目を細めた。