【sm】真夜中、星雲旅行24時【snr】 (ページ25)

今日:3 hit、昨日:22 hit、合計:30,559 hit

》25 ページ25

「絶対離さないから！ヤダ！目の前で死ぬとか絶対許さないから！」

こう啖呵を切ったのはいいが、もうそろそろ、腕が、限界で。彼の手をもう一度引っ張ろうとして、力を入れたその時。

私の方の地面もぬかるんでいて、上手く足に力が入らなくて。
それに気付いた時にはもう遅く、空中に身体が浮いて。
瞬間、それに気付いた彼が私の手をパッと放して。一人で落ちようとした彼にそれは許さないと手を伸ばして彼の腕を掴んで、こちらに引き寄せた。驚く彼の顔が視界の端に見えたけど、今はそれを気にしている場合ではない。
もう片方の手で、せめてと彼の後頭部に手をやり。せめて、せめて頭だけは守らなければとぐっと自分の方に引き寄せて衝撃に備える。

そこからは、しばらくの間の記憶が無い。

「う、え…」

自分のうなされるような声で目を覚ます。…寒い。ゆっくり目を開けると、土の地面が真っ先に目に飛び込んできて。雨の降り続ける音、匂い。体に貼り付いた服が気持ち悪い。
そして。
顔を上げると、不機嫌そうな顔をした志麻くん。

「はあ、起きたか」
「ごめん、私…」
「…ええよ、別に。俺を守ろうとしてくれたんはわかったから」

「あはは」、と先程とった自分の行動が少し恥ずかしくなって、笑って誤魔化す。
はっ、はくしゅん。
笑いの最後、寒さに耐えかねた体がくしゃみをしてしまい。う、やっぱり寒い。雨で全身ずぶ濡れだから仕方ないけれど、これは風邪をひいてしまうな、と自分の先を予想しながら。

「寒い？」
「あー、うぅ、ちょっと」

今の状況だとどうしようもないこともわかっているが、ここは素直に寒いと答えておいた。だって、風邪をひくことが確定するレベルで寒いし。

「…悪い、落ちたときにペンダントどっかに落としてもうて、魔法使えへんねん。やから」

背中。嫌やったら別にいい。
そう言ってこちらへ近付いて、背を向けた彼。
は？と思わず声が出そうになるけど。いや、どういうこと。数秒考えて、一つの結論にたどり着く。

くっつけってこと？
いやいやいや、いきなりどういう方向性で距離詰めてくるの、と困惑して。でも彼は申し訳なく思っているみたいだし、それを切り捨てるのもまたこの間みたいになったら困るしなあ、と思って私の方も背を向けて彼にぴたりとくっついた。

背中越しに、彼の体温が伝わって。……温かい。