【sm】真夜中、星雲旅行24時【snr】 (ページ20)

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はあ、やっと、人の波を越えて、日陰で一人になれて。
自分の身体じゃない、気味が悪い"それ"を動かしながら、壁に身を預けた。

「…A、願いは叶ったんか？」

目を開けると、目線を上げると。
紫髪の彼が、そこにいた。

「…気持ち悪い」
「……は？」
「自分の身体じゃないみたい、なにこれ、気持ち悪い。なんで私自分じゃないのに、これ、なんでみんな私のこと褒めてるの、意味わかんない。気持ち悪い、なんで」

溜め込んだ言葉をぶちまけるように、自分でも驚くほどすらすらと言葉が出て。
その言葉は、あまり賢いとは到底言えるものではなかったが。
「お前」と少し怒りを含んだその、彼の声。
今はどうでもよくて、誰がどう怒ってるとか、そんなこと。
「俺がどう思って」とか「お前のために」とか聞こえたけど、そんなこと。

自己満足じゃないか。

何も言い返さない私を見て、怒りをぶつけるその矛先を失ったらしく、彼は「もういい」と去ってしまった。
…いたことに気付かなかった、センラくんは「ごめん、ちょっとまーしぃ落ち着かせてくるからAちゃんはそこおってな」と言っていたが。
別に彼の言ったことを守ったわけではない、どこにも行けなくて、ここにいた。それだけ。

しばらくして、本当にセンラくんが戻ってきた。
とりあえずカンカンになってるところから半分ぐらいまで減らせたけど、とげっそりした顔をして話す彼は流石に可哀想だった。
可哀想で、だから話を聞いた。

「多分、まーしぃ若干焦ってたんちゃうかな、Aちゃんの願い事見つからへんから」
「で、結果がこれ」
「…体育祭でピンときたんやろね、願いは"活躍すること"かもって」
「はあ、そんなの望んでるわけないのに」

少しやさぐれていたこともあり、既に疲れている彼に対して申し訳ない話し方をしたと思う。
それでも、彼は私に真摯に向き合ってくれて。その話し方は、目は、私を冷静にさせた。

「魔法の類でも使ったんやと思うよ。Aちゃんがおかしいって思ったんやったら」
「あー、宇宙人マジック」
「そ、宇宙人マジック」

少し懐かしい、でも使い慣れたその単語を口にする。
今までの"それ"は私を幸せにするものだったが、今回のは少し、違って。彼にとっては善意だったのかもしれないが、私にとっては逆効果だった。