【sm】真夜中、星雲旅行24時【snr】 (ページ11)

今日:7 hit、昨日:22 hit、合計:30,563 hit

》11 ページ11

何が、『心残りを無くす』だ。
こんな場所に心残りなどある訳がないのに。

そのどす黒い何かを隠すように、彼らについて歩く。
多少「大丈夫ですか？」と心配されたものの。センラさんは周りをよく見ていて、かつ気遣いができて優しいようだが。他人にあまり踏み込む勇気がないのだろう、私の笑顔を見てその手を引っ込めた。

桜が、私以外を祝うように咲いている。
去年はもう散っていた筈なのに。
…別に学校に。嫌な理由があって行きたくないわけではない。他人から見るとただの甘え。
それでも、どこか私以外で構成されるその箱を見ることは。
非常に辛く、苦い。

入学式の看板と、その前で写真を撮る生徒やその親を横目で見て。
去年は一人だったな、なんて感傷に浸って。
今日は、この二人が隣にいるけど。
知っているのか知らないのか、私と同じ方向へしっかり歩いてついてくる二人。
去年したそれと同じように、クラス編成の表が書かれた大きな模造紙が張り出されている場所へ辿り着いて。

「…え？同じクラス？」
「なるほどな、ここで過ごせと」
「同級生って扱いなんやね」

全く分かっていない私と、納得したような横の二人。
困惑した表情を見せる私に、"優しい"センラさんが一言。

「多分、Aさんが叶えたい願いは学校生活の中にあるんですよ。で、僕らがその手伝いをするために一緒に学校生活を送ることになった、っていう流れかと」
「てか同級生なんやったら敬語やとおかしいんやない？」
「それもそうかも。じゃあ敬語なしで話させてもらおかな。とりあえずよろしゅう、Aちゃん」
「ほら、Aも」
「……え？あぁ、はい。いや、うん。よろしく」

『叶えたい願いは学校生活の中にある』。それが頭の中にこびりついて、疑問となって。
それを私にわかるように説明してくれた優しい彼の言葉は、逆に私にとってはナイフとなって。
私は、何がしたかったのか。
考えても考えてもわからなくて。入学式、結局校長先生の話は何も覚えていない。

まあ、去年もまともに聞いていなかったけど。
教室に戻っても去年と変わらない担任、クラスメイトの、見覚えがある面々。
違うのは、紫と黄の頭があることぐらい。
何もおかしいことはないとでも言うような世界の流れに、自分だけが取り残されたような気がした。