CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？Ⅱ【utit】 (ページ3)

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「せ、センラさん？」

彼の頬をなぞって伝った涙を拭い、声をかける。次第に唸っていた声はしゃくりあげるような泣き声に変わり、苦しそうな表情になって。

本格的に起こさなければならない、と彼の肩をやわめに掴んで揺さぶって声をかけると。

うっすらと、彼の蜂蜜色の瞳が開いたように見えたその瞬間。腕を掴まれたような感覚、視界が揺れて次の瞬間暗くなる。背中に腕を回されきつく抱きしめられているような状態。あまりにも急な出来事に声が出ないほど驚いて。

「…いや、嫌や──もう、嫌や、おらんくならんとって、どこにも行かんとってや、おねがい、お願いやから──もう、どこにも行かんとって、ください……」

潤んだ声で話す彼は、まるで何かに怯えているかのように震えている。うわごとのように「どこにも行かないで」と繰り返すその様子は、小さな子どものようだった。

腕を掴まれた後に抱きしめられたから、掴まれた方の腕は自由であることに気付いて。落ち着かせるようにその手で彼の背中をゆっくりと、優しく一定のリズムでぽんぽんと叩けば、徐々に落ち着いてくる彼の呼吸。

さすって、「大丈夫、大丈夫」と彼に小さく語りかければ震えも収まってきた。背中に回されていた腕も力が抜けてきて、落ち着いた彼の顔を見ようとして、その腕の中から離れると。

「…センラさん、大丈夫、ですか」

声をかけて彼の顔を下から覗き込む。すると、うっすらと開いていた蜂蜜色の瞳が大きく見開かれて──

「え…はっ、えっ、へっ！？」

物凄い勢いで私から距離を取り、全身で動揺を表現するかのようにわたわたしている。先程まで泣いていたのに、動揺して立ったりしゃがんだりする彼が面白くて、思わずくすくすと抑えられない笑みがこぼれる。

「えっ、えっ！？」
「っふ、あはは、動揺しすぎですよセンラさん」

口元を抑えて目を白黒させる彼。「えぇ…」や「うそぉ…」と何度も短い言葉を繰り返している様子からするに、現実だと思っていなかったのか、それとも私だとは思っていなかったというようなリアクションで。

彼が隅の方で小さくなってじっとしているのが何かの小動物のようで、可愛らしくて面白い。周囲をキョロキョロと確認して、笑顔の私しか居ないことを再確認して安心したのか、大きくため息をついてゆっくりと立ち上がった。