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「あ!もう起きとるやん。さっき見に来たときはそもそもおらんかったのに、やっぱ時間通りやなあ」
赤い髪の男性──情報によるとおそらく坂田という名前の──彼はこちらへ近付き、私の様子を窺う。
「こんにちは。というか初めまして?君が多分La Cèneの新しいメンバー、ウェイターとして配属されたAちゃん、やね?」
「…はい、その名前で合っていると、思います。」
「あ、そっか。急に記憶とかじゃないただの情報がいっぱい流れ込んできたらびっくりするよなー、ちょっと待とか」と彼は私を気遣って、私が横になっていたベットの横にある椅子に腰かけた。
燃えるような赤い髪に透き通った紅の瞳。白のスタンドカラーシャツに黒いべストを着ている。彼のことをじっ、と見ていると、「もしかして…な、何かついてる?」と口元を指で拭った。
「いえ…あの、坂田さん、で合っていますか?」
「そうそう、スー・シェフの坂田。いちお、副料理長って立場。もしなんか困ったことがあったらいつでも頼ってくれてええからな」
「頭も整理ついてきたみたいやし、言語の統一も大丈夫そうやな」と彼はゆっくり立ち上がる。
「じゃ、行こか。まずは料理長に挨拶やね」
「えっと、確か、シェフ・ド・キュイジーヌの…志麻さん」
「うんうん、その調子。ま、ゆっくり焦らずに詰め込まれた情報を使える情報にしてこな」
「結構神サマもいい加減なとこあるからなあ、詳しいこと教えてなかったりするし…まあそれも少しずつ覚えていこ」と彼は部屋のドアを開けて、「どーぞ」と先に出るように勧める。
「すみません、ありがとうございます」
「いーのいーの。こうやった方がモテるって本に書いてあったし、ちょっとスマートな感じしたやろ?」
少し返答に困りまごまごしていたが、特に彼は気にしていない様子。
私を気遣って冗談や業務に関係のない余計な話が多いのかと思っていたが、彼は元々そういった性格なのかもしれない。
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作者名:#N/A | 作成日時:2021年4月22日 21時