検索窓
今日:23 hit、昨日:0 hit、合計:26,916 hit

:37 ページ39

「無理、してる訳やないんよ。これはほんと」


ぽつり、優しげな表情で彼はつぶやく。


「うらたさんとセンラが急におらんくなった時は、ほんまに焦って坂田と試行錯誤してきたけどさ、最近─────」


料理、作る楽しさを思い出してきたんよ。

心の底から、嬉しそうな笑顔。


「それは、俺もそうかも。前は料理作ることに特になんも思ってへんかったけど────美味しいって言ってもらえることって、すっごい嬉しいんやなって」


坂田さんが、私の方を向いてつぶやいた。やろ?なんて、志麻さんが得意げに笑っている。


「Aが来てからさ、なんかもっと美味しいもん食べて欲しいなって思って。新しいレシピいっぱい試したなるんよな」


やから、と言った志麻さんに「まあでも、しっかり休んでもらわなこっちが心配するからさ。休め」と坂田さんがはっきり一言。
通じんかったか〜、なんて言われた方の彼はへらりと笑っている。


「そこまで言われたらしゃあないなあ、ゆっくりさせてもらおうとするかな」
「はい。ゆっくり休まれた後にまた志麻さんの美味しい料理、食べさせてくださいね」


「なんや、可愛いこと言ってくれるやん」と振り返った志麻さんに、あ、と何かあまり良くない予感。




「え!?あっちょっと、なんでAの頭撫でてんの!?」


ダメ!と坂田さんが私の腕を引っ張り志麻さんを引き剥がす。
志麻さん、すごい嫌そうな顔してる。もう何度目だろうか、こちらは恥ずかしさを少し乗り越えてきたような気がする。


「てか何でAもAでおとなしく頭撫でられてんの!」
「いや、なんだかもう慣れてきたような気がしまして...」
「は!?慣れ!?」
「え〜、じゃあ今度から真っ赤な顔見られへんくなるんか...」
「は!?真っ赤!?」


まったく状況がわかっていない坂田さんは私と志麻さんを交互に見て、頭に疑問符を浮かべている。


「もー!Aは志麻くんのもんちゃうし!」
「でも坂田のもんでもないやん」
「ぐぅ...」


挟まれている私、困惑。
ニヤニヤとしている志麻さんに助けを求める訳にもいかないし、私の腕を離さない坂田さんはぷんすこ、と擬音が浮かぶぐらいに何故か怒っている。


「なんかやなの!まーしぃがAと一緒にいる時にふわってするのは前からわかっとったけどさ、最近なんかヤダ!」


ぎゅっと掴まれた腕が若干、痛くなってきた。

:38→←:36



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
92人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:#N/A | 作成日時:2021年4月22日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。