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ここは、現世と幽世の狭間にある選ばれた魂のみが辿り着くことができるレストラン。
至高の「最後の晩餐」を提供する『La Cène』────。
らしい。
目覚めて状況が全く掴めないままぼんやりと横になっていると、突然膨大な量の情報が次々と頭の中に流れ込んでくる。
その中で上記の情報をかろうじて引き留めた。私はこのレストランにウェイターとして配属され、シェフが作り上げた「最後の晩餐」を死者の魂に提供する役割を務める、らしい。
その他にも、ここはレストランがある洋館の2階、スタッフが生活する寮の一室であるということやそのスタッフの情報等々……眩暈がする。
最後に、「君を呼んだのは他でもない、おそらく君にしかこなせない役割があるから────期待しているよ」と。
私にしかこなせない役割、今突然頭の中へ流れ込んできた情報の中にはそういった類のものと思われる情報は含まれていなかったのだが…。
その他に私の頭の中には情報がこれといって存在しないため、現状ではそれを確かめることは不可能だろう。
ところどころ抜けがあり不完全な状態で目覚めてしまったが、このレストランのスタッフ達は一度死んだ人間であり、生前の記憶は抹消されてこのレストランで新たな人生を迎えるとのこと。
その為、「私にしかこなせない役割」について他に考察するすべは無い。つまり、私の生前の記憶はおそらく、存在しない。
とりあえず今は起き上がって私以外のスタッフとコンタクトを取らなければならない。
そう思いゆっくりと身体を起き上がらせると、コンコンコン、と控えめなノックの音。
ゆっくりとドアが開き、部屋の中を覗き込んできた赤い髪の男性と目が合った。
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作者名:#N/A | 作成日時:2021年4月22日 21時