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夢を見た。
料理を食べていた。
目の前にいる男の子が微笑んでいる。
こちらへと身を乗り出し、布で頬に付いたソースを拭ってくれる。
兄弟の世話をするように──────いや、彼とこの視点の人物は兄弟ではないのか?
本当に愛おしそうに、それでも世話を焼かせる人物に対して呆れたような─────
ゆっくりと意識が覚醒していくのを感じる。あまりにも思考しすぎた。その夢の続きを見ることはなく、現実へと引き戻される。
微睡の中、現在の時刻はどれくらいだろうと懐中時計を探そうをする。
確か志麻さんや坂田さんがしているのと同じように、ベストのボタンにチェーンを掛けてポケットの中へしまった筈だ。
寝床から起き上がり、ハンガーにかけてクローゼットにしまったはずのベストを探す。
両開きのあまり大きいとは言えないクローゼットを両手で開き、中を見て驚く。
先、一度眠って起きた際にワイシャツのみは着替えたのだが、その際には特に多いと感じていなかったワイシャツやベスト、パンツ等々の着替えが増えている。
誰かが部屋に入ったという話は聞いていないし、そもそも誰かが入ったような形跡が無いことから人ではない者の仕業のような、そのような雰囲気を感じて少し気味が悪い。
彼らから"神様"といった存在の話────おそらくここに初めて来た際聞こえてきた声の主のことであるような────や魔法や魔術といった存在があるという情報が既に頭に入っている事から、多分その。
不思議な事が不思議では無いといった扱いで起こるのだろう。今みたいに。
それを若干非現実的だなと感じつつも、眠る前まで着ていたベストを探し手に取る。今まで着ていたものと大差はないが、これが正装だと思われるウェイターの全身ワンセットも揃えて取り出した。
目的の懐中時計をベストから取り出し時刻を確認する。
この時刻であれば身支度を済ませて打ち合わせ等が終われば丁度良い時間になると考え、早速着替えを始めた。
ウェイターの正装に身を包み、自室のドアを開けて玄関ホールへ向かおうとすると。
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作者名:#N/A | 作成日時:2021年4月22日 21時