朱夏のレゾナンス (ページ2)

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｢お好み焼き、ひとつ。｣

忘れたふりをして、
なんてことないふりをして、
鉄板の上で、ジュウっと、
焼かれるお好み焼きを見つめる。

おいしそうだな。
と、思う割にお腹が空かないのは、
何故だろう。

｢…どうも。｣

袋に入ったお好み焼きを受け取って、
再び、歩き出す。

お祭りに来たのは、ちょくちょく、
私のことをこき使う母親に、お好み焼きとベビーカステラを買ってくるよう、
頼まれた(無理強いとも言える)から。

今日に限って、お祭りなんか来たくなかったのに。
こっちの気も察してほしいよ。

ぼそぼそと嘆きながらベビーカステラを
探し求めていると、少し先を歩いていた
見覚えのあるTシャツ。

彼の笑顔が頭を横切った時には
自制心なんて、どこかへ飛んでいて、

あの日、遠ざかっていった後ろ姿に、
気付いたら、走り出していた。

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