R , 14 ページ16
(琉依side)
病院で今日もAの様子を見ていたら、ふいに一人の女性が病室に入ってきた。
「…A…！」
「…どなた、ですか？」
声をかけると、その人は我に返ったようにこちらを見た。
「…その子は私の妹の娘よ。…やっと会えた」
「なっ……」
Aの叔母だという女性は、深く悲しそうな顔で部屋を見回し、悠人先生を見つけて話しかけた。
「あなたが主治医さん？Aの容態、詳しく教えてくださいますか？」
「失礼ですがあなたは…」
「紹介が遅れました。私、この子の叔母の、花咲希美と申します。両親を亡くしたこの子を引き取り、夫と共に我が子のように接してきました」
そう言って軽く一礼をした彼女からは、育ちの良さが溢れていた。そういえば、Aにも育ちの良さが見えたことがあった。食べ方や箸の持ち方などから。
Aは今日は珍しく眠りについている。
ここ数日夜だろうが構わず起きていたため、流石に寝ているようだ。それも本人の意思で行っているのではなく、脳が無理やり寝させているのだと悠人先生は推測していた。
「…そう、Aはその、若年性依存症候群とやらにかかっていたのね。知らなかった…」
話が終わって、希美さんは目に涙を滲ませた。
Aには何も知らされていなかったという。今回も携帯の逆探知を使って会いに来たそうだ。
抱え込むタイプだとわかってはいたけど、ここまで来ると最早背負い込み過ぎなんじゃ……。
「…それで、あなたは？」
「あ、俺は彼女と同じ寮に住んでいる、空井琉依といいます。今は大学生です」
涙を拭いた彼女に問いかけられ、俺は慌てて自己紹介をした。
寮に住んでいることは一応聞いてはいたらしいが、俺が寮のことを説明すると、初めて聞いたような顔をしていた。
「…そう、そうなのね。よかったら、この後寮に住んでいらっしゃる皆様にお話させていただいても…？」
「…大丈夫ですよ、わかりました。皆に伝えておきます」
真剣な表情を、俺の答えを聞いて、ありがとうと緩ませた後、希美さんはAに目を落とし、Aの頬をするりと撫でて今にも泣きそうな顔をしていた彼女をみて、思わず胸が苦しくなった。
「ありがとう、琉依さん。この子のこと看てくれていて」
寮への道の道中で、希美さんはふとそう零した。
儚い雰囲気を前に、俺は何もしていませんよと首を横に振ることしか出来なかった。
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紫音 - 作者さん！頑張って下さい！応援しています。 (2020年4月21日 3時) (
レス) id: f284f93940 (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 一気に呼んじゃいました…！！続編楽しみにしてまってます！！ (2019年8月5日 0時) (レス) id: 7dea81a844 (このIDを非表示/違反報告)
舶(ﾊｸ)(プロフ) - とても引き込まれる内容で一気読みしてしまいました。お気に入り失礼します。更新待っています！ (2019年2月27日 14時) (レス) id: 7017cc79b6 (このIDを非表示/違反報告)
フラン(プロフ) - 続編おめでとうございます！関係ないですがTwitterの方のラブレターで切腹と机拭きのやつ私です← (2018年12月20日 16時) (レス) id: 24d7937625 (このIDを非表示/違反報告)
游 - ずっと、ずっと前から、応援してました...！更新されてるのに気付いて、ついさっき駆けつけました！本当に、更新してくれてありがとうございます！これからも、頑張ってください！ (2018年12月17日 20時) (レス) id: cb81d0bb92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わっふるくりーむ | 作成日時：2018年11月17日 22時
