若年性依存症候群 Chapter,3【 utit 】

R , 20 ページ23

(翔太side)


あれから、あの日、Aの叔母の希美さんから話を聞いたあの日からもう一年が経った。

あの日から数日ほど経った日に、Aはついに眠り始めてしまった。それからずっと眠り姫のように寝ている。


学校側に彼女の事情を説明し、校長先生達も理解してくれたおかげで、彼女はちゃんと進級出来ている。



けれどいつ目覚めるのかもわからないまま待ち続けるのは、やはり少ししんどかった。

もう目覚めないんじゃないか。もう二度と話すことも出来ないんじゃないか。そう考えると毎日怖くて悲しくて堪らなかった。


真冬くんはは自分を責めるのをやめて、彼女が目を覚ます方法をずっと探し続けていた。他のみんなもAのことを気にしつつ自分の将来に向けて着々と進み始めていた。

俺も、彼女の友人に声をかけて、彼女が戻ってきた時に笑顔で迎えられるように準備をした。

彼女のために、俺と如月さんと桜野さんで分担して、授業のノートを取り続けている。

ちなみに、長谷川葵さんは姉の教育実習生と共に学校を去り、今は知らない。寺田愛唯さんは学校に少しずつ来なくなり、彼女も退学してしまった。


けれど…どれほど月日が経とうが周りが変わろうが、Aは目覚めなかった。日に日に落胆していく自分が嫌だった。



いつものように彼女の見舞いに来た俺は、ベッドの横に置いてある椅子に座って、いつものように彼女に話しかける。学校の様子とか、寮のメンバーも少しずつ変わり始めてるんだよ、だとか。

そして手を握って、早く目を覚まして、と祈るのだ。少しでも届くように。


……でも今日は、いつもとは違った。


「…しょう、た？」


一年ぶりに、彼女の声がした。

R , 21→←New Character

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す