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お疲れさま/kne ページ1

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「だーっ、疲れた!」
「お疲れ様〜」

 仕事帰り、疲れてソファに倒れ込んでしまったわたしを見て、若干驚いた叶くんが頭を撫でてきた。若干ビクつきながらも、わたしはそれを享受する。ベッドに倒れたくないのは、未だに風呂に入っていないからだ。



 突然だけど、わたしのパーソナルスペースはかなり広めだ。誰かに触られたり、距離が近かったりするのが慣れずに、昔からどうしても固まってしまう。家族もパーソナルスペースが広い方だったから、それはもう遺伝なのかもしれない。

 しかし一方で、恋人である叶くんはパーソナルスペースが狭い方だと思う。何せ距離が近い。スキンシップも多い。だいぶ慣れた方だとは思うが、付き合った当初はとにかく慣れなかったものだ。テレビを見るためにわたしがベッドに足を伸ばして座っていたら、見にくいからって言いながらわたしを胸元に抱き抱えてきたり、キッチンで料理してる時に後ろから抱きついてきたり──、他にも様々ある。



「かわいいねえ〜〜」
「……ちょ、」

 頭を撫でる手が、時折首筋を滑るのが擽ったい。触れる度にぴくりと体が震えると、上からからかい混じりの甘い声が降ってきた。相変わらずのとろけるような甘い声に、思わず胸がどくんと高鳴ってしまう。

 何度聞いても慣れないものだ、彼氏の甘ったるい声には。聞く回数を重ねれば、この甘さの中に含まれている感情が、なんとなくわかってしまうものがあったりする。自意識過剰だと思わなくなるほど、わたしのことが愛おしいと言いたげな声色なのだ。

 
 それに何も言えなくなって、指の擽ったさから逃げるために起き上がった。叶くんはしゃがみこんでいたのか、起きたわたしより低い位置に顔があった。もう起き上がって大丈夫なの?と言いたげな彼の視線に、わたしはなんとなく頷く。


「あ、お風呂沸いてるよ。はいる?一緒に」
「イエ、一人で結構です」
「けち」

 本当に油断も隙もならない男だ。お風呂が沸いていることを教えてくれた時は普通の声色だったのに、何故か最後の一言だけちょっぴり含みを持たせて言うのだ、この叶くんは。思わず体が硬直してしまったからか、冷たい返事になってしまったが、内心バクバクだ。心臓がいたい。


 ぼくはいつでも入りたいけどなあ、一緒に。なんてぽつり呟く叶くんの言葉を背中越しに聞きながら、わたしはその場から逃げるようにお風呂場へと向かった。

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作者名:わっふるくりーむ | 作成日時:2022年1月14日 13時

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