二 ページ10
最寄り駅までの車内で、ふと車窓に映る景色を見ていた。
「…あれ?」
「ん?」
私の声につられて、藤井くんが反応する。
「外。雨上がるかもしれない」
先程まで土砂降りだったはずなのに、雨脚が弱まってきている。
土砂降りだから、と送ってくれている藤井くんになんだか申し訳なくなる。
「…そういえば、藤井くんって最寄り駅一緒なの?」
勝手に気まずくなってしまい、ふとそう聞いてみる。
「ん?あぁ、せやな」
「でも、電車で見た事無かったけど」
と言うと、そっぽを向いて
「車両が違うだけやろ」
と言った。
意外と嘘が下手なのかもしれない。
「ありがとう」
「んあ?いやええんよ、通り道やし」
これも多分気を遣って言ってくれたことだと思う。
これはモテるわけだ。
そんなことを思いながらぼーっと電車に乗っていると、いつの間にか最寄り駅についていた。
「あ、着いた」
「せやな。でもこんな格好で一人で歩かせられへんから家まで送ってくわ」
「え、悪いって」
「ええから」
そういうと、傘を差してこちらを向き、はよ行こ。と言ってきた。
「そういえば、もう少しで夏休みやな」
相合傘をしながら、私の家までの道中で話をする。
なんだか青春ぽい。
「そうだね。」
「なんか予定あるん?」
「んー…特にないかな」
「あ、まじ?せっかくの夏休みなのになあ」
と私を見て軽く笑った。
52人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:とらい | 作成日時:2019年8月1日 21時