自由へ道連れ【Fujii.R HBD】 (ページ9)

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顔を上げると、藤井くんが傘を差して立っていた。

「…え？」
「いや、え？ちゃうやん、何しとるん、そんな格好で」
「何って、これから電車乗って帰ろうと」

思って、と私が言おうとしたのを遮って、

「あかんやん！」
と大声で言った。

「ちょ、声おっきい。ここ駅前だから」
「あ、ごめん。でも、自分の格好わかってないやん」

と言い、私から目を逸らした。

恐る恐る自分の服を見てみる。

当然かもしれないが、濡れていて。

下着も、透けていた。

「…えっと」
「ホンッマ、俺が来てなかったらやばかったで自分！」
と言い、何故持ってるのかは分からないけどカーディガンをカバンから取り出し、私に投げてきた。

「何これ」
「それ着て帰ればまだマシやろ、てかまだ雨降っとるから送ってく」

そうぶっきらぼうに言うと、傘を私に押し付けて駅の方へ向かってスタスタと歩き出してしまった。

慌てて借りたカーディガンを着て追いかける。

土砂降りの雨の中。

止む気配は無いように思える。

電車の中では、私は奇妙な視線の的となったが、藤井くんが守ってくれた。

ずぶ濡れの女子高生は傍から見たら変なふうに映るだろうと思って、藤井くんが来る前は少しどうしよう、なんて思ったりしていたが。

本当に来てくれて助かった…

そう思って、私が立っている電車の壁に片手をついて、明後日の方向を向いている藤井くんを見ながら思ったりしていた。