相 ページ6
昼休み。
時々私は、空を見上げながら屋上でひとりお弁当を食べる。
別に友達がいない訳では無いけど、ひとりになって広い空を眺めて、好きな曲を聞きながらご飯を食べる時が、私にとっては至福のひとときなのだ。
この日も例に漏れず、一人でイヤホンで音楽を聴き、空を見上げながらご飯を食べていた。
「絡みついた縄、解くとき……」
時々鼻歌なんか歌いながら。
突然、音楽が聞こえなくなった。
何事か、と思って後ろを振り返ると、藤井流星がイヤホンを持ってこちらをいたずらっぽい笑みで見ていた。
「藤井くん…何?イヤホン返して」
「A、こんな所で1人で食っとるん?」
「見ればわかるじゃん、早くイヤホン返してよ」
藤井くんは、ふふんと笑って、私の隣に座って購買で買ったであろうパンの封を開けた。
「え、なにしてんの」
「俺もここで食べるー」
「は?」
「イヤホン、俺が食べ終わるまで返さへんから」
は?
まじか…
藤井くんは、私のイヤホンを耳に軽く当てて、「これなんて曲?」と聞いてくる。
「自由へ道連れって曲」
「ほーん」
「え?聞いといてそれで終わり?」
「なんか、かっこええ曲やな」
「でしょ?てかほんとに何しに来たの?」
「ええやん別にー。屋上はAだけのもんじゃ無いで」
「そりゃあそうだけど」
「これからは俺もここで食べよー」
「え」
「え、ってなんなん?」
と言って、藤井くんは笑い、焼きそばパンを齧った。
…なんだかんだで悪くない、かもしれない。
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作者名:とらい | 作成日時:2019年8月1日 21時