こ ページ19
「藤井くんって誰？」
「えっ……」
「なあー！さっきから何言うとんの？てか自分名前なにー？教えてや」
訳が分からない。
重岡くんは、私のことも藤井くんのことも忘れてしまっていた。
咄嗟に駆け出してしまった。
藤井くんと重岡くんが唯一できた友達なのに、なんで重岡くんはキレイさっぱり忘れてるんだろう。
誰かが私を呼び止める声が聞こえる。
構わず、無我夢中で走った。
何が起きてるのかわからなくなり、藤井くんと交換した連絡先を探す。
「えっ、ない……なんで」
確かにあった、LINEの友達欄に確かにあった。
「りゅうせい」の文字も、トーク履歴も、
全て消えていた。
訳が分からなかった。
なんでこんなことが起きてるのか。
なんでこんなに必死に藤井くんの事を探してるのか。
友達だから？
いや、違う。
ここで彼を見つけられなかったら、何となく大事なものを失う気がするから。
とにかく無我夢中で走っていたら、
気付いたら家にいた。
「おかえり、そんなに汗かいてどしたん？」
はは、汗だくやん〜
って言いながら笑うのは、
藤井くん。
「なんでここにいるの？」
「ん？あー何となく。お邪魔してまーす」
「ねえ、重岡くんなんで私のことも藤井くんのことも忘れてるの？」
と聞くと、藤井くんの顔から笑みが少し消えた気がした。
「んー、それに答える前にお願いがあって」
「何？」
「流星って呼んでやあ」
このタイミングで？
「は！？」
「ええやん。一生に一度のお願い」
そういう彼は、どこか悲しい目をしていた。
つい断れなくて、
「流星」と呼んだら。
「んふ、はーい」と嬉しそうに微笑んだ。
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作者名：とらい | 作成日時：2019年8月1日 21時
