つ ページ11
「いいじゃん、来年受験生だし。」
「んーまあそやけど…良かったらさ」
と言うと、藤井くんは突然立ち止まり、
「俺とひと夏の思い出、作ってみん?」
と言った。
「えっ?」
「あかん?」
「ダメじゃないけど、え、藤井くん彼女とか」
「おったらこんなこと言ってないわな」
確かに。
「えっ?でも二人きりで?」
「嫌?」
と、私を見下ろしそう言う。
…正直、藤井くんの事は嫌いではない。でも、何を考えているのか分からない。
私の事を馬鹿にしているのか、本気で言ってるのか。
「…本気で言ってるの?」
「おん」
「…でもカップルだと勘違いされるかもだから」
「じゃあひとまず今度の花火大会。しげも一緒に行こうや」
「花火、大会」
「おん。浴衣、着て来てな」
男友達と花火大会なんて、初めてだ。
去年までは、同じクラスの女の子何人かで行ったりしていたし、浴衣は着ていなかった。
今年はみんなどうしてるのだろうか。
みんな、クラスがバラバラになってしまったりして、私にお呼びがかかってないと言うことは、そういうことなんだろうな。とか考えて悲しくなる。
「どうしたん?」
「え?」
色んなことを思い巡らせて勝手に悲しくなっているのを気付かれたらしい。
「ううん、なんでもない。花火大会ね、楽しみにしてる」
「おん。」
そんなことを話してると、家の前に着いた。
「あ、着いた。ありがとう」
「おん。…あ」
藤井くんがそういうと、傘を閉じて空を見上げた。
つられて空を見てみる。
あれだけ降っていた雨がすっかり止んでいて、綺麗な虹が出ていた。
爽やかな風が二人の間に吹き抜けた。
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作者名:とらい | 作成日時:2019年8月1日 21時