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そのままバスはショッピングモールの駐車場内にあるバス停に停まり、慌ててフウマさんを起こしてバスを降りた。
乗っていたのは数十分だったが、それだけでも眠りについていたフウマさんは伸びをしては、だるそうに歩き始めた。
「フウマさん、やっぱり帰ろうよ」
「だから気にすんなって。何買うの」
またしても私の心配を遮断されながら、自動ドアを抜けると店内には人が犇めいていた。
薄暗い私の生活とは真逆に位置する、華やかで活気溢れる店内をちまちまと歩く私にフウマさんが面白そうに顔を緩めていた。
「……フウマさん、何笑ってるの」
「だってさ、明らかに動きおかしいじゃん」
「こういう雰囲気に慣れてないの、」
何だかいたたまれず足が止まる。
そんな私の肩に通行人の体がぶつかってしまい、すみませんと頭を垂れた。
その人は笑顔で気にしないでくださいとばかりに会釈し、右手に繋がれた小さな手を引いてまた歩きだした。
私には、あんな時期があったのだろうか。
家族との思い出はいつも苦くて、手を繋ぐことすら苦痛だった私には到底理解は及ばない。
「A」
ふと、フウマさんに声をかけられて振り返る。
と、同時に私の小さな手を掴んでそさくさと歩き始めた。
私の指に触れるフウマさんの手はごつごつしていて、私より遥かに大きくて温かかった。
「ふ、フウマさん!?」
「こっち見んな、恥ずかしいから」
空いた片方の手をポケットに突っ込むフウマさんの、ぎこちなく繋がれた手に引かれているので、彼の方を見てしまうのは仕方のないことだった。
見るなと制したフウマさんは、耳の縁を少し赤くしていた。
そんなに恥ずかしいのに手を繋いでくれたのはきっと、私が羨望の眼差しで家族を見ていたからだ。
どうしてフウマさんは、私が言わずとも求めるものを知っているのだろう。
分かってくれるのだろう。
「……フウマさん」
「ん?」
賑やかな店内で、間違いなく私の声を拾い振り返る。
そんな彼の手を少しだけ強く握り、声をかけた。
「服、見たい」
「服か。どんなの?」
「……フウマさん、選んでくれませんか」
「俺?センス合わないかもよ」
「大丈夫」
「言い切るなぁ」
面白そうに笑いながら、フウマさんがまた歩き出す。
私は彼の手を離さぬようにして後について歩いた。
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miU(プロフ) - おかえりなさい!これからの更新楽しみにしています! (2018年4月25日 7時) (レス) id: b909dcbe9a (このIDを非表示/違反報告)
Ryrie**(プロフ) - みうさん» みうさん、ありがとうございます。これからさらに落ち着かなくなるような展開を考えていますので、是非最後までお付き合いくださいませ。 (2018年1月13日 22時) (レス) id: 3c581ac854 (このIDを非表示/違反報告)
みう - どきどきして心が落ち着きません!続きを楽しみにしています! (2018年1月7日 23時) (レス) id: b909dcbe9a (このIDを非表示/違反報告)
Ryrie**(プロフ) - カグラさん» カグラさん、ありがとうございます。まだまだ序盤ですがこれからも見てくだされば幸いです。 (2018年1月5日 22時) (レス) id: 3c581ac854 (このIDを非表示/違反報告)
カグラ(プロフ) - ずっと待ってました!この世界観が好きで更新するたび楽しく読ませてもらってます(о´∀`о)これからも待ってます! (2018年1月4日 14時) (レス) id: 55da401ce9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅島 | 作成日時:2017年9月20日 16時