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とはいえ、うどんにそんな手を加える要素は無かった。
麺も汁も市販のもので、新たに加えたのと言えば輪切りにしたネギと、玉葱と人参を使ったかき揚げくらいのものである。
喧嘩を買ったはいいものの、何とも質素な料理に後から恥ずかしさがやって来る。
「フウマさん、出来ましたよ」
「お、」
フウマさんがパソコンをしまい、机を開ける。
私は熱々のうどんたちを両手に持ち、片方を彼の目の前に置き向かいに座った。
「ソファーに座らないの」
「地べたの方が落ち着きます」
「ふぅん……つーか美味そうだな」
フウマさんの瞳がきらきら輝き、うどんの中をまじまじで覗き込んでいた。
その様子がおも.ちゃ売り場で物色する子供の、胸を踊らせている様子に見えて小さく笑った。
「……何笑ってんだよ」
「いや、いい顔してるなあって」
「やっぱこっち来いA、食べてる姿まじまじ見られんの嫌なんだよ」
フウマさんが私の腕を取り、自分の隣に引き寄せた。
座った瞬間に舞った僅かな風が、彼の微かに甘い香りを運んでその距離の近さを私に知らせる。
黙ったままだと、この近さに息を詰められそうだったので、慌ててうどんの入った器を取り、豪快に啜った。
少し汁でふやけたかき揚げは、肉とは違うジューシーさを醸し出していて、半透明の汁がかき揚げにも麺にもよく絡む。
単純に美味しい、と思った。
フウマさんはどうだろうとちらり、一瞥すると啜りダイナミックに咀嚼している様子が見受けられた。
「……美味しいですか？」
「麺も市販だし、汁もあれだろ、粉末タイプの。だからお前のガッツリ手料理じゃないのが残念だな」
「うどんが食べたい気分だったんだから仕方ないじゃない、それに……フウマさん、疲れてたから食べやすい方がいいかなって」
言い訳にも聞こえるぼやきを、頼りない小さな声で呟いているとふ、と柔らかな笑い声が漏れた。
何かに思いを馳せているような憂いがあって、伏し目がちだったのが少し、胸に引っかかる。
「うめーよ」
「本当に？」
「市販だろうが何だろうが、人が作ったもんは間違いなく旨いんだよ」
そう言ってから器を傾け汁を飲む。
初めて声をかけられた時、恐ろしいと目を瞑ってしまった自分が馬鹿らしくなる程彼は優しい。
まるで、私の足りない、知らない温かい事をかき集めて注いでくれるようだ。
うどんが、温かい。
その当たり前に、逃げて来てから死んでいた心が震えた。
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miU(プロフ) - おかえりなさい！これからの更新楽しみにしています！ (2018年4月25日 7時) (
レス) id: b909dcbe9a (このIDを非表示/違反報告)
Ryrie**(プロフ) - みうさん» みうさん、ありがとうございます。これからさらに落ち着かなくなるような展開を考えていますので、是非最後までお付き合いくださいませ。 (2018年1月13日 22時) (レス) id: 3c581ac854 (このIDを非表示/違反報告)
みう - どきどきして心が落ち着きません！続きを楽しみにしています！ (2018年1月7日 23時) (レス) id: b909dcbe9a (このIDを非表示/違反報告)
Ryrie**(プロフ) - カグラさん» カグラさん、ありがとうございます。まだまだ序盤ですがこれからも見てくだされば幸いです。 (2018年1月5日 22時) (レス) id: 3c581ac854 (このIDを非表示/違反報告)
カグラ(プロフ) - ずっと待ってました！この世界観が好きで更新するたび楽しく読ませてもらってます(о´∀`о)これからも待ってます！ (2018年1月4日 14時) (レス) id: 55da401ce9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅島 | 作成日時：2017年9月20日 16時
