60話 ページ35
カキン、カキン―――
槍と大刀の交わる音が鳴り響く。
絶え間なく変わる攻防戦。
ハクと、私。
腕前は互角に近かった。
「―――っ!」
姿勢を低くしてハクの大刀をスレスレで避ける。少しでも気を抜くとやられる。
そんな直感が脳裏を過った。
「槍の腕あげたな!イオリ!」
「ハクこそ!前より強くなってますね!」
バッ。一旦距離を取り息を整える。
槍を構え直し、ハクを真っ直ぐに見つめた。
ハクも肩で息をしている様子。
体力を使い切るまでやることは無い。
決着は、これで決める。
ヒュウウ……
一筋の風が吹き抜け、木の葉が落ちる――その瞬間、私とハクは同時に飛び出した。
槍と大刀。
ぶつかり合ったその結末は――――ハクの大刀が私の首筋に、私の槍がハクの首筋に突き付けられていた。
それも、あと少しずれたなら大刀の先端が私の首筋に血の華を咲かせるであろう距離。私の槍も、同じ。つまり、決着は。
「引き分け、か」
「引き分け…ですね」
ハクは、武器を下ろす。それを合図に、私は槍を投げ捨て、頭を下げた。
「姉様と、ジェハを宜しくお願いします」
「イオリ…!?」
私は、ゆっくり頭をあげる。
困惑するハクを他所に話を続けた。
「姉様の体調は、余り良くない。だから、空都に連れていって腕の良い医者にみせれば治るかもしれない。そう思ったけど、ハク達に託す」
「はぁ…!?何でだよ。医者に見せた方が……」
「医者より適任者がいる。あの人の名は」
「ラナのこと?妹さん」
おだやかなゼノの声が割って入ってきた。
黄龍の瞳は何もかも見透かしているように感じた。
「ラナ……?」
「初代巫女です。あの人なら治る方法も知ってる。いや、ラナ様が駄目ならもう治す手段は無い」
「――っ」
息を呑むハク。だが、ゼノは予想してたのか"やっぱり"と呟いた。
「場所は黄龍が知ってる。ハク達が連れていってあげて」
「妹さんは?行かないの?」
私の口振りから、察したゼノ。
コクン――私は頷いた。
「私は、城に戻ります。出発は明朝」
「何でだよ!?シオンの妹だろ!側にいてやれよ!!」
声を荒げるハクに胸が痛い。
本当なら私も…ずっと、ずっと、ずっと一緒にいたかった!
だけど、駄目なの。
「――ここは、姉様の居場所であって私の居場所は、ここじゃない」
「イオリ様……」
「イオリちゃん」
ハクでも無く、黄龍でも無い。彼らの声が後ろから飛び込んできた。
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暁風の夢(プロフ) - 芽留さん» ありがとうございます!更新は遅くなるかもしれませんが精一杯頑張ります! (2016年5月7日 21時) (レス) id: 4565eb4012 (このIDを非表示/違反報告)
芽留 - 初めまして(//∇//)小説大好きです(*≧∀≦*)これからも頑張って下さい\(^o^)/ (2016年5月7日 21時) (レス) id: 9850d6f22d (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - りりらさん» ありがとうございます!これからも この作品をよろしくお願いします (2016年3月25日 19時) (レス) id: 4565eb4012 (このIDを非表示/違反報告)
りりら - 一気に読んでしまいました!面白かったです (2016年3月25日 19時) (レス) id: c83de81e00 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - きーや(。-_-。)さん» コメントありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです (2016年3月24日 10時) (レス) id: 4565eb4012 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁風の夢 | 作成日時:2015年12月3日 22時