59話 ページ34
「―――ハク」
そっと木の裏から顔を出したハクは
ハクらしくない表情で気まずそうにしていた。
「ハク…その、無事で良かった」
私自身も…何て言っていいのか分からなくて。
でも何か言わなくてはと、焦る想いから
出た言葉は、至って平凡なものだった。
「――ああ」
頷き返すハク。そして、大刀を片手に持ち
人差し指で少し離れた茂みの方を指差した。
「手合わせ頼む。イオリ。昔のように、な」
「喜んで！」
***
【キハト視点】
――時間は少し遡り、イオリ様やシオン様方が夕食の最中のこと。
俺だけ１人抜け出して、森を歩く。
ひっそりと佇む木々に囲まれた、この静かな空間は１人になりたい時にはもってこいだ。
「おや、キハト君じゃないか」
空から降ってきた声。不思議に思って見上げると緑の龍が木の上に腰を下ろしていた。
「先客がいたか。邪魔したね」
「邪魔だなんて思っちゃいないよ」
スタン。身軽に木の上から、わざわざ俺の隣に降り立った
「イオリちゃんとしたい話とは別件で、君とも話がしたくてね」
「何の用ですかね？話せることなんてないっすよ」
距離を詰めようと近寄って来る緑龍から
離れつつ、冷たくあしらう。
たが、逆に嬉しそうに緑龍は笑った。
「いいね。キハト君。さっきのイオリちゃんを口説いたことを、まだ怒ってる？」
「当たり前ですって。やがて、皇后になられるイオリ様を悪い虫から守るのは俺の仕事です」
「僕は虫扱いかい―――ま、いいや
キハト君の主について話があるんだよ」
―――ぴくっ。
キハトは、微かに肩を震わせた。
王位を簒奪した主への文句でも言いたいのか。
「何か誤解してるようだけど違うよ。ただ
僕が言いたいのはスウォン陛下の人柄。
君から見てどんな人？」
なんだ…そんなことか。心の中で安堵する。
「………強くて、真っ直ぐで、イオリ様を一番に考えてる人」
「なるほど。つまり、キハト君はイオリちゃんが好きな訳だ」
「好きっすよ」
緑龍は俺の即答ぶりに呆気に取られたようだ。
かすかに動揺が見てとれる。
「はぐらかされると思ってたよ。これは相当惚れ込んでる？」
「それは事実っすけど―――好きだからこそイオリ様には幸せになってほしいじゃないですか」
そうだね――緑龍は、ジェハは、そう言って微笑んだ。何を思ったのか。その真意は俺には分からなかった。
「ジェハこそシオン様に恋心抱いたのはいつ？」
「お、名前で呼んでくれるなんて嬉しいね」
「話を反らすな！！」
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暁風の夢(プロフ) - 芽留さん» ありがとうございます！更新は遅くなるかもしれませんが精一杯頑張ります！ (2016年5月7日 21時) (
レス) id: 4565eb4012 (このIDを非表示/違反報告)
芽留 - 初めまして(//∇//)小説大好きです(*≧∀≦*)これからも頑張って下さい＼(^o^)／ (2016年5月7日 21時) (レス) id: 9850d6f22d (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - りりらさん» ありがとうございます！これからも この作品をよろしくお願いします (2016年3月25日 19時) (レス) id: 4565eb4012 (このIDを非表示/違反報告)
りりら - 一気に読んでしまいました！面白かったです (2016年3月25日 19時) (レス) id: c83de81e00 (このIDを非表示/違反報告)
暁風の夢(プロフ) - きーや(｡-_-｡)さん» コメントありがとうございます！そう言って頂けると嬉しいです (2016年3月24日 10時) (レス) id: 4565eb4012 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：暁風の夢 | 作成日時：2015年12月3日 22時
