25話�� ページ50
医務室に運ばれ、
チョッパーに団扇で
扇いでもらいながら
Aはベッドで横になる。
額を抑えて唸っているが、
だいぶ火照りは消えた。
「Aは苦手なものが多いな」
「仕方ないだろ……
風呂は入ったことないんだ」
「そうなのか？」
「あぁ…」
チョッパーは牛乳片手に
パタパタ扇ぎ続けてくれる。
少し話していたら、
また医務室のドアが開いた。
入ってきたのはサンジと、
サンジに背負われているローだった。
「どーしたんだ！？」
「悪ぃ、ゾロのバカに挑発されて
ローが逆上せちまったんだ」
ずいぶん回復したAは
ベッドから降りた。
入れ替わってローを寝かせる。
意識はしっかりあるようで、
数分前のAのように唸っていた。
サンジの話によれば、
風呂に慣れないローもあがろうとしたら、
もうギブアップかと
ゾロに煽られたらしい。
そこで負けず嫌いを発動してしまい、
それに乗った結果がこれだ。
そして元凶の剣士はまだ入っていると言う。
ジジイか。
Aは一枚団扇を持って
自分がやってもらったみたいに
ローに風を送る。
「負けず嫌いも場所を選ばないとな…」
Aはボソッと呟いた。
チョッパーにもらった水が
まだ半分以上残っている。
脱水になる可能性もあるため、
Aはローにコップを渡した。
しかし、受け取ったのは
ローではなくサンジだった。
「人に飲みかけをやるな」
「……すいません」
いや、この船で飲みかけだ何だって、
気にするの？？
コップを持って出ていくサンジの
背中を追いながら
そんなことを考える。
「もう休んだ方が
いいんじゃないか？」
ぽかんと口を開けていたAに、
気を使ってチョッパーが言った。
さすがに疲れたため、
その言葉に甘えることにした。
「あー…じゃあそうする」
「また物置で寝るのか？
ちゃんと部屋で寝た方がいいんだぞ」
「……わかった、考えとくよ」
「！…うん！」
否定されると思ったが
肯定的に受け取られたため、
チョッパーは思わず嬉しくなる。
Aは少し微笑んで医務室から出た。
物置へ向かう途中、
水を持ったサンジが向かい側から来た。
「寝るのか？」
「あぁ」
「…おやすみ」
「………おやすみ」
終始何かされるかと警戒したが、
案外あっさりサンジは通り過ぎた。
拍子抜けしたが、
何もされないならそれが一番だ。
「(…だっせぇ)」
自分の背中を
見られていたことにも気づかず、
物置へと入っていった。
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作者名：リョク | 作成日時：2020年5月24日 12時
