20話�� ページ25
それからサンジは
何かとAに
ちょっかい出すようになった。
料理の手伝いという名目で
キッチンに呼び出しては
キスをして、
夜は船の後方で
水平線を眺めているAに
近づいてはキスをして、
刃こぼれしている短刀の
手入れをしているAの項を触るなど、
いちいち手を出してくる。
そしてそれにいちいち怒ってたら
疲れるのも無理はない。
「あんた最近生気なくない？」
「…あ？」
そんなある日、甲板の日陰で
ぐでーっと項垂れているAに、
ナミは声をかけた。
「もともとなさそうだけど
さらにないような気がするわ」
「別に……ただサンジが………」
「サンジくん？」
「………………
………サンジがいじめてくる、だけ」
「はあ？サンジくんは
そんなことしないわよ」
「…あ、そう…………思い過ごし？」
「そうね、思い過ごしよ」
「そうか…」
ナミは首を傾げながら
Aの前を通り過ぎた。
思い過ごしならそれでいい。
いや絶対違うのだが、
そう思わないと納得できないのだ。
だがその夜、
Aはまた水平線を眺めていたら
こちらに近づく足音が1つ。
「はぁ……毎度毎度何の用だ」
「お前も飽きねーな。
空なんか眺めて何が楽しいんだ？」
「…別に空を見てるわけじゃねーし、
楽しくて 眺めてるわけでもない」
「ふーん…」
サンジはタバコに火をつけた。
「ナミさんに注意されたんだが」
「………」
「"Aの勘違いだと思うけど
あまりいじわるしてやるな"ってよ」
「………」
「いじわるって言ったんだな」
「……ありのまま言えばよかったのか」
「いーや………お前は言わないだろ」
「……うっざ」
サンジは笑った。
Aはため息をつき、
頬杖をつく。
しばらくそうしていたが、
隣の気配が動き出すのを
能力が見た。
Aは瞬時に懐から短刀を抜き、
腕を真っ直ぐ伸ばして刃先を向ける。
サンジは少し驚いた顔をした。
「なんの真似だ…？」
「この距離だ」
理解できないサンジを他所に
Aは言葉を続ける。
「これ以上俺に 近寄るな。
今後一切。いいな」
「………」
それ以上互いに何も言わず、
Aは物置へと戻っていった。
煙を吐きながら、
サンジは水平線を眺めていた。
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作者名：リョク | 作成日時：2020年5月24日 12時
