254話 ページ10
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なかなか目が見れない中、目に入ってきたのは
ほんの少しだけ赤く染って見える頬だった
それが今のやり取りによるものなのか
また別の何かによるものなのかはわからない
鳴「Aちゃんならどうするの?」
見ていられなくて
前を向いて何もなかったかのように漕ぎ出した
人ひとりいない住宅街の中
聞こえるのは自分自身の心音のみ
いつもなら弾む声も上手く口から出てこない
A「……………応援なんてしない」
しばらく続いたかのように思えた沈黙は
実際は数秒間の出来事だった
そんなものが酷く長く感じてしまうのは
どうしてなのだろう
この瞬間が怖いと思っている証拠とでも言いたいのか
ようやく返ってきたAの答えは
"応援なんてしない"という意地悪で予想外な答え
A「したくない、絶対に」
Aがした質問は
"もし自分にどうしようもないくらい大好きな人が出来たらどうするか"
というもの
鳴が出した答えは応援すると言った方がかっこいいと思うけれど自分はそこまでかっこよくなれない
対する質問した張本人のAの答えは
応援なんてしたくない、絶対にという答え
これはつまり2人とも同じということなのだろうか
A「応援なんてできない」
腰に回された小さな手にギュッと力が入る
目の前にある大きな背中に額を寄せる
どっちのものかもわからない心音が大きな音を立てて
Aの耳に届く
A「最低だよね、こんなの」
鳴「そう?」
A「友達が幸せになれるかもしれないのに」
鳴「そしたら俺だって最低だよ」
A「………………………そっか」
今ここで好きだと伝えたらどんな結末を迎えるのだろう
もし少し先の未来を見ることが出来るのなら
迷うことなく
最初で最後かもしれないこの気持ちの答えを見つけにいく
鳴「Aちゃんは……いつ初めて人を好きになった?」
家族でも、友達でもない
友達だけど、友達じゃない
近づいて、離れて、また近づいての繰り返し
知れば知るほど好きになる
A「今年」
こんな時間がずっと続けばどれほど幸せか
そう思う頃にはもう
帰るべき場所に辿り着いていた
A「2年生になってから初めて好きな人が出来た」
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みこ(プロフ) - 初めまして!途中から号泣しつつ、焦ったくてソワソワしてました(*_*)更新楽しみにしてます! (6月3日 23時) (レス) id: f5c0cfc27f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちあき | 作成日時:2022年8月11日 5時