【◇】銀木犀 6. (ページ6)

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250話ページ6

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会えば会うほど、話せば話すほど気持ちは募るばかり

1日が信じられないほど輝いて

毎日が宝物のように大切になった

A｢迎えに来てって話だけど…やっぱり大丈夫｣

スマホを握りしめながらいつもと変わらない優しい声で話す

そんな姿でも惹かれてしまう

この際電話の向こうにいるのが誰かなんてどうでもよくて

やっぱり大丈夫という言葉を聞いて舞い上がりそうになる

A｢友達と帰るから｣

今はまだ友達のまま

友達のままだけどただのクラスメイトではない

友達は友達だけどどちらかと言えばその存在は特別で

手を伸ばせば変われるはずなのに

A｢うん、またね｣

電話を切って一呼吸置くと

Aは再び息を吸って、小さく吐き出した

鳴に背を向け気づかれないように口に手を当てる

もしかしたら心臓でも飛び出しているんじゃないか

思わずそんなことを考えてしまうくらい

今のこの展開に驚いていた

鳴が寮生なのは早い段階で知っていたから尚更だ

A｢本当に……いいの？｣

鳴｢え｣

A｢その…寮に門限とか、そういう規則ってないのかなって思って｣

背を向けてしまったことを酷く後悔した

こんなことしなけりゃよかった

1度背中を向けてしまったら振り返ることが出来ない

振り返ったら最期、だなんて大袈裟だけど

鳴｢うん………大丈夫、間に合うから｣

A｢じゃあお言葉に甘えてもいいでしょうか｣

鳴｢いいよ｣

心臓が跳ねる

足に力が入らず

手の力が抜けていく

鳴｢自転車、漕いでもいーい？｣

A｢うん｣

鳴｢んじゃそうと決まれば荷物はここね｣

A｢え？｣

なかなか踏み出せないもどかしい関係

それでも1度、たった1度でも

人は一歩踏み出すとそこから歯止めが効かなくなる

夕焼けが互いを照らし、輝かせた

A｢じゃあ……それって……｣

鳴｢うん、Aちゃん後ろ｣

A｢え、や、それはちょっと｣

鳴｢いいじゃんいいじゃん｣

当たり前のように後ろに乗れと言い出す鳴に対し

わかりやすく戸惑い、躊躇うA

送ると言った時はあんなだったのに

どうしてこんなことになるのだろう