248話 ページ4
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結局、練習が終わる時間まで学校にいた
いつも見ている成宮くんはどこにもいなかったし
白河くんも、カルロスくんも私の知ってる2人じゃなかった
A「(私にとってとんでもないことでも)」
A「(成宮くんからすればなんでもないんだろうな)」
今までのことを思い出すと顔が自然と熱くなる
特に体育の時間にあったこととか、保健室でのこととか
私にとってはとんでもないことでも
成宮くんからすれば何回か寝たら忘れるくらいのこと
そう思うとますます悲しくなってきた
沢山話すのだって、たまたま席が隣だったからってだけ
A「(私はどうしたいんだろう)」
自転車の鍵を外して
ぼんやりと考え事をしながら外に出ようとした
その瞬間
「Aちゃん!」
聞きたくないのに、聞こえると嬉しい声がした
振り向こうかほんの少しだけ迷う
無理だな、諦めないとな、叶わないな
さっきまでずっとそんなことを思ってたくせに
素直に声の聞こえた方向を見てしまう
今もしも願いがひとつ叶うのなら
きっと私は何としてでもこの初めてを叶えようとする
A「成宮くん」
いつも通りを装って振り向くと
そこには肩で息をして
嬉しそうに笑う成宮くんがいた
私の前にいる成宮くんはいつも嬉しそうに笑ってる
それどころか時々目が合っただけでニコニコしてる
さっきまで真剣な表情で獲物を狙うような目付きをした
知らない成宮くんだったのに
急に心のどこかでほっとしている自分がいる
嬉しいなって、思ってしまっている
A「練習、いいの?」
鳴「もう終わったから」
A「そっか、お疲れ様」
鳴「ありがとう、飲み物」
A「ううん全然大丈夫」
会話がどこかぎこちなかった
いつもなら合う目線がこの瞬間はどうも合わなくて
自転車のハンドルを握る手に無意識に力が込められて
じわりと汗が滲んでいく
日陰にいるのに驚くほど暑くて、どうにかなりそうで
鳴「そう言えば冨田は一緒じゃないんだ」
A「うん、今日長引くみたいだから」
鳴「そっか…」
距離を感じた
近くにいるはずなのに
矛盾するかのように遠く感じてしまう
A「(距離、感じたはずなのに)」
A「(どんどんどんどん…らしくなくなってく)」
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みこ(プロフ) - 初めまして!途中から号泣しつつ、焦ったくてソワソワしてました(*_*)更新楽しみにしてます! (6月3日 23時) (レス) id: f5c0cfc27f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちあき | 作成日時:2022年8月11日 5時