No.5 ページ6
「寝る。どっか行け」
獅子の男にそう促されわたしは渋々植物園を後にした
結局、既視感の謎は解けぬまま
わたしは再び宛もなく学園をひとりとぼとぼと歩いていった
本当の自分への手掛かりなど見つからず、自然と視線が俯く
「おい、そこの仔犬」
『……へ』
呼び止められたのはそんな時だった
暖かそうなコートに身を包んだ黒と白のツーカラーヘアーの大人
教師、だろうか。彼は教鞭を持ってわたしに近付くと訝しげに上から見下ろしてきた
「ハーツラビュルの仔犬か。学年と名前は？」
『え、と…』
わたしは息が詰まる
答えられるものは何一つ持ち合わせておらず、どうしようと内心冷や汗をかいた
何も答えられないわたしを見て教師はますます目を鋭くする
「どうした？まさか自分の名前を忘れたわけではないだろう」
そのまさかです
とは言えないので、なんとかわたしは仮初の名前を口にした
『ネモ、です』
「姓は」
『……』
「ふむ…答えられないか」
尋問する声に険しさが増した気がした
『(まずい)』
彼はわたしがここの生徒ではないことをほぼ確信している
「ネモ……
また随分とわかりやすい偽名を使ったな、駄犬」
指先で弄んでいた教鞭が鈍く光る
鞭の先をわたしに突きつけてくる
「どこの誰なのかは捕らえた後にじっくり聞かせてもらおう」
緊張がピークに達する
圧に負けた脚が後ろへと下がる
どくどくと心臓が早鐘を打った
「そんな名前の仔犬、うちには居ないぞ。ネモ」
杖先から閃光が迸った
『ッ！！』
間一髪で攻撃を体を捻ることでかわす
けれど男は既に第二撃を放っている
辛うじて避けた火球が足元の地面を焦がした
男は容赦なく攻撃を次々と放っているが表情は余裕に満ちている
『(逃げなきゃッ！)』
じゃなきゃやられる！
狩人のような鋭い視線から逃れるようにわたしは足を縺れさせ走った
「逃げても無駄だ不審者」
乱れる息が苦しい
わたしは見知らぬ土地を勘の向くまま駆け抜けた
曲がり角を何度も転びそうになりながら走る
「うわっ」
「鬼ごっこか？」
「何やらかしたんだアイツ」
野次馬を掻き分け道無き道を行く
その途中、人混みの中から適当に選んだ人間の腕を無造作に掴んだ
「は？」
驚いて目を瞠ったその人が何かを言う前にわたしは掴んでいた手を離す
そして颯爽とその場を後にした
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くらげ - コメント失礼します！2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです！次回作が作られたら速攻で見ます！これからも頑張ってください！！ (12月3日 10時) (
レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します！全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します！！この前の小説も今回もとても素敵なお話でした！初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください！ (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します！！！！！とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりですwこれからも投稿頑張ってください！応援してます！ (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2020年12月25日 18時
