No.37 ページ45
「兄ちゃんと帰ろう、A」
伸ばされた腕
蔦が絡み付き血が流れても尚、それが引っ込められることはなかった
『兄さまぁッ！！』
帰りたい
もうお家に帰りたい
ゴミの山も、この真っ暗な世界も此方の家ではない
死んだ当時のまま
10歳で時を止めた姿で兄へと腕を伸ばした
【誰のおかげで実体を持てていると思っている！！】
〔お前は亡霊！幽霊！ゴースト！〕
【我らの力がなければお前はただの死人！！肉体を持って生を謳歌する事も叶わんのだぞ！】
天使共が何か言っている
確かに此方は、彼らの力がなければ生者のように生きることは出来ない
でも
「お前は誰でもない誰かなんかじゃない」
もう此方はネモなんかじゃない
「替えのきく存在でも、誰かの身代わりでもない」
自分を偽って誰かのフリをするのはもうやめだ
此方は生きたい。でもそれは厄災の器になってでも生きたいという意味じゃない
「お前はお前だ。他の誰でもない」
生きたい、
生きたい、
此方は此方として、自分を生きたい
『こんにちは、兄さま。此方の名は』
腕を伸ばし、大好きな兄の手を取った
『A･アジーム
……貴方の影として散った、生命の名です』
厄災の器を脱し、此方は家族の元へと帰る
兄さまが迎えに来てくれた。魔法の絨毯に乗って
【おのれおのれおのれおのれおのれ！！】
〔だが我らは覚醒した！小娘なぞいなくとも我らはここに顕現する！〕
球体を抜け出すと同時に此方の体は透けていった
ただの実体を持たぬゴーストへと戻りつつある
奴らの傘下から抜け出した今、此方は空へと還らなければならない
でも、厄災は完全に此方がいなくとも存在出来るくらい覚醒してしまったらしい
どうしよう、と兄を見上げた
「大丈夫だ
お前の
先輩？
そう首を傾げた時だった
「神話の時代は終わり、今はヒトが主役の時代」
静かだが凛とした声が響いた
「退散してください。嫌と言うのなら、深淵へと突き落とす他ありませんね」
【第五の！】
天使が叫んだ時にはもう、終わっていた
「
突如地面に大きな穴が空く
一寸先すら見えぬ、それは正しく深淵
球体が音もなく穴へ吸い込まれていく
「はは、流石グレイだな！」
兄の朗らかな声が夜空に響いた
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くらげ - コメント失礼します！2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです！次回作が作られたら速攻で見ます！これからも頑張ってください！！ (12月3日 10時) (
レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します！全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します！！この前の小説も今回もとても素敵なお話でした！初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください！ (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します！！！！！とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりですwこれからも投稿頑張ってください！応援してます！ (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2020年12月25日 18時
