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No.34 ページ40

( No side )



「おら、立てアジーム」


グレイの兄がカリムの腕を掴んで立たせると不遜な態度で言葉を続けた



「大体、兄弟っつーもんは嫌でも目に付く存在だろうが

無視したくても出来ねぇ。いい感情だろうが悪い感情だろうが、嫌でも存在を意識しちまう。何かと脳裏にチラつくのが兄弟」


チラと盗み見た先でグレイと目が合い微笑まれて、兄はフンと照れ隠しに鼻を鳴らす




「兄貴が妹に忘れられてんじゃねぇよ。どんな手を使っても存在を意識させろ」


グレイの兄なりの激励にカリムは厳かに頷きを返す





「私達兄妹が何とか道を拓きます。アジーム君は気にせず突き進んでください」

「グレイはともかく、そこの兄にはちと厳しいんじゃないか」



そこで口を挟んだのがリリアだった

言われた兄は憎らしそうに妖精を見下ろす




「俺はミジンコ程度の魔力しかねぇよ。魔法の才もねぇ。だが体術と毒の扱いに関しては妹より優れてる自信はあるぜ」


グレイは鈍臭いからなと鼻で笑う兄


だが兄妹間の空気は悪くない





「俺も行く」

「ジャミル…」

「悪さをするあいつに、アジーム家に仕える者として仕置きする必要があるからな」


回りくどい援護の申し出にカリムはニッと笑う





「同じく妹を持つ兄として

……お前を応援する、カリム」


「…ありがとな、ジャミル」



物語の終わりは近い









「奇妙な縁もあったもんだなぁ、グレイ」

「兄さん」


死んだ兄妹が2人隣並んで空を仰ぐ


生前は出来なかった事だ

死んだ今になって漸く、二人は同じ空を見上げる




「お前は血縁殺しの犯罪者。俺は大した実力もねぇただの無能」


先刻の緑の閃光を目撃した生徒たちが図書館一帯に集まり出す

まるでこれから起こる全てを目に焼き付けんと、生徒らは死んだ筈の兄妹を見つめた



「そんな俺たちが此度、歴史に名を刻む機会に恵まれた」



見ろよ

兄が指差す方へグレイは視線を移す



そこには沢山のドローン

騒ぎを聞きつけたメディアが映像に収めようと寄越したカメラが、空を舞っていた




「世界中の奴らが見てるぜ」




罪を償う時が来た、とグレイは静かに笑う


独りよがりの贖罪では無い

自分の持てる全てを懸けて世に貢献する時だ





「見せつけてやりましょう」



人類の勝利を

生前何も残せなかった兄妹の奮闘を




今夜は伝説の生まれる日







「行くぞ」


各々手に武器を取る





「着いてこい」


兄妹を先頭に、群れが走り出した

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くらげ - コメント失礼します!2シリーズ続いて読みました。なんか伏線とか伏線回収とか綺麗すぎて五芳星とか厄災とかもうほんとにすごかったです!次回作が作られたら速攻で見ます!これからも頑張ってください!! (12月3日 10時) (レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
サカ - 初コメ失礼します!全部一気読みしてしまいました。すごく素敵な物語だと思います!!!!今まで読んだ中で1番好きです (2023年1月22日 22時) (レス) @page50 id: 0270587d36 (このIDを非表示/違反報告)
やぎ - 初コメ失礼します!!この前の小説も今回もとても素敵なお話でした!初めて夢小説で泣きました(T ^ T)これからも更新頑張ってください! (2022年9月25日 12時) (レス) @page50 id: c3ead30411 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 初コメ失礼します!!!!!とりあえず神作をありがとうございます:( ;´ཫ`;):シリーズ一気読みして何度泣いたことか…感動やばいですコレ…こんなに泣いたのは久しぶりです‪wこれからも投稿頑張ってください!応援してます! (2021年11月12日 13時) (レス) @page50 id: d86b6fe909 (このIDを非表示/違反報告)
次亜鉛素酸 - 一気読みを今更させていただきました。伏線やら何やらもう神ですね(語彙力)もうコメントをご覧になっていないと思いますが、素晴らしい作品をありがとうございました。 (2021年10月26日 1時) (レス) @page50 id: 1c5b1c4456 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ニノココ | 作成日時:2020年12月25日 18時

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