【ツイステ】N e m o

No.31 ページ37

(リリアside)



「ダメだ…やっぱり俺にはこいつを傷付けることは出来ない」


そう言ってカリムがネモに向けていたペンを下ろした




と、同時に空間が歪む音がする




「まずい」

それは結界の破られる音

ネモが、厄災が。あの子の遺した贈り物を食い破ろうとする音だった




【覚醒の時！】

〔目覚める時！〕


「な、なんなんだゾ！？」



どこからともなく声が響いた

男か女か、大人か子供か。判別のつかぬ謎めいた声が虚空から降ってくる





【〔 醒める彗星/苦艾(メテオライト･アプシントス) 〕】






その瞬間



地面が揺れた




「伏せろ！！」


咄嗟に叫ぶ

皆が地面に伏せ揺れに耐えているのを横目に、わしはネモを振り返った





『うああぁああッ』


苦しそうに奴が呻いている

辛うじて人型を保っていた奴だが、空からの謎の声を皮切りに徐々にその姿を変えていった




「なんだよ、これ…！？」


カリムが伸ばした腕も虚しく、ネモの周りには数多の苦艾が生え、奴の体を締め付けていった



「カリム離れろ！」

「でもあいつが！」

「言うこと聞け！！」



ジャミルが間一髪でカリムをネモから遠ざける

その間にもネモは着々と肥大化していった





「…な、にこれどーなってんの」

「最早原型ありませんね…」


双子が上を仰ぎ見る





「…天井突き破ったわよ」


ネモの姿は最早見えず、巨大な植物の塊の中に取り込まれてしまった


目の前にあるのは圧倒的な質量を誇る、苦艾で構成された球体



それはついには図書館の天井を突き破る程に肥大化した






降ってくる瓦礫を薙ぎ払いわしらは皆空を仰ぎみる



「…流石に無理だ」

隣でマレウスがわしにだけ聞こえる声でそう呟いた



「厄災は今や完全に覚醒した…人の子が遺した切り札も打ち砕かれた」



どうする

そう視線で問われるがわしは冷や汗が背中を伝うばかりだった




突き破られた天井から空を仰いだ

日が暮れ、星を抱く大海が広がっている




その星海から石が降ってくるのが遠目に見えた

隕石だ


それがいくつも





「…もはやここまでじゃろう」



皆が押し黙った


皆が皆、世界の終わりを悟ってしまった





＿＿＿星を探してください


不意にあの子の声が蘇った

わしは胸にぶら下がるガラクタを服越しに撫でる





＿＿＿先輩なら大丈夫です




やはり捜し物は苦手じゃ

数多ある星の中で、どれがそなたかわしには分からぬ





＿＿＿きっと見つけられます

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