第44の呪い ページ46
「それがAの願いだろ。アズールに一秒でも長く生きて欲しいって、Aが言ったんだろ
……なら生きろよ、アズール」
フロイドが僕に言い聞かせるようにそう呟いた
ジェイドは僕の瞳を覗き込んで続ける
「アズール、生きるんですよ…例え身が切られるほど辛くとも。……それが彼女の望みなら」
分かったか、と肩を揺らしてくる二人
僕は項垂れ、俯き、背中を丸めておもむろに口を開いた
「善意からくる言葉が必ずしも優しいとは限らない
例え相手を想う故の発言でも、時にそれは相手を傷つけるナイフになる」
____アズール、生きなさい
「これは呪いだ。呪詛だ」
胸に手を当て、ぐしゃぐしゃの顔で断言する
彼女の言葉は全て呪いだ
Aは僕に生きろと言った
僕だって生きたい
でもそれは彼女のいる世界をだ
A亡き今、この世界で息をしたいとは微塵も思わない
「……なのに死ねない。彼女の
なんて酷い女
「自分勝手、我儘、世間知らず
自分は言いたいことバカスカ言って、僕の意見は全部無視」
悪態をつく
けれど彼女の柔らかな笑顔を思い出し、口が自然と閉ざされた
「……それでもAのことが好きです」
代わりに出たのはそんな言葉だった
「……僕が彼女を嫌いになれるわけないんですよ…」
Aに言われずとも今後とも彼女だけに恋をして、彼女だけを愛すくらいには
忘れたくても忘れられないほど彼女の姿は鮮やかだ
____もしも次があるなら
「長生きしよう、アズール。しわくちゃのおじいちゃんになるまで」
「えぇ。死後一人待ちぼうけして不貞腐れるAの姿を拝んでやりましょう」
もちろん最期まで僕達もお供しますよ、とジェイドが泣きながら笑った
「……全く、お前たちは…」
呆れるように笑う
もう長年の付き合いになる双子に……僕の友に
僕は小さく心を込めて呟いた
「………………ありがとう」
泡のように儚く消え去りそうな小声
それでもちゃんと聞こえたようで、双子はお互い顔を見合わせ小さく笑った
僕には生きる道しか残っていない
ならば生きて、生き抜いて
しわくちゃのおじいちゃんになって、天寿を終えたその暁には
彼女に会いに行こう、足を使って
慰め合うように僕達は肩を寄せ合って、静かに涙を零した
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瑠璃(プロフ) - 軽い気持ちで、寝る前に読んでたら泣きすぎてヤバかったです。バットかと思ったらちゃんとその後もあって救われました。良い作品ありがとうございました! (2月1日 1時) (レス) id: 7cf0957e0e (このIDを非表示/違反報告)
だいふく - 久しぶりに感動しました!期末テスト明けだったのでめっっちゃメンタルが回復しました!ありがとうございました! (9月6日 23時) (レス) @page50 id: 9426ee414d (このIDを非表示/違反報告)
ふふ - 全私が泣いたッッッ!!!もう1リットルくらい涙流した…。もうお゛しあ゛わぜにッッッ!!!!! (6月11日 9時) (レス) @page50 id: bc020e7b09 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - 泣いた。好きいいいいいい ハピエンで終わらせてくれないところがさあああああ (2022年10月29日 23時) (レス) @page50 id: 546cca6b35 (このIDを非表示/違反報告)
春の夜 - ほんと好きです(ごいりょくそうしつ) 貴方様の美しい地獄にはいつも胸を刺されます。 (2022年9月4日 18時) (レス) @page49 id: fac8821556 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニノココ | 作成日時:2020年11月13日 18時