第41の呪い ページ43
眠りにつくお姫様へキスを贈る王子様の話はよくあるけれど
その逆は見たことがないなと幼心に感じたのを今でも覚えている
『アズール、生きなさい。……生き抜きなさい、私が居なくとも』
それは願いだった
僕を想う故の、祈りだった
「…A…」
けれどそれは僕にとっては呪いでしかなかった
その効果は骨身にまでしみていた
これのおかげで僕は彼女と出会い、彼女に救われたのだから
「……だ、……め、だ…」
やめてくれという僕の願いは無視され、彼女は自分の願いを押し付ける
僕の必死の懇願は彼女の口の中に溶けていく
キスを贈られていた
『アズールはこれからずっと私のこと忘れられずに生きていかなきゃいけない。死にたいと思っても生き続けるの』
視界が徐々に鮮明になっていく
霞んでいてよく見えなかった前が段々と明るみになる
『アズールが私に望んだように、私もあなたに望む』
泡だ
彼女が…大好きなAが泡へと帰っている
『いっぱい生きていて欲しいの。……一秒でも長く、私が居なくとも』
＿＿＿僕は、君に一秒でも長く生きて欲しいんです…
＿＿＿…どうして分かってくれないんですか…
不意に思い出したのは、オーバーブロットした僕を止めた彼女に対して言ったかつての言葉
指先から徐々に泡になっていく彼女の頬へ必死に腕を伸ばす
けれど触れない
泡沫の彼女に触れても、全く手応えを感じない
唯一感じるのは、触れた先から泡が弾け散る感触
つまりそれは彼女の死を意味する
僕は彼女の死に触れている
「い、くな………おいていかないで、A…」
僕の願いは聞き届けられず
彼女は泡となり空気へと消えていく
『……あいしてる』
顔に暖かいものがぽつりと落ちる
それは泡の残骸か、それとも
「いくな！！A！！！」
重たい体がようやく持ち上がる
体に繋がれた管がブチブチと音を立てて外れていく
嘘のように軽い腕を精一杯伸ばす
だが
パチン
軽い、弾けるような音
その音を最後に、Aが消える
「A……Aッ！」
彼女の残骸を探す
けれど何一つない
彼女は身につけていた服から僕が贈った呪いまで全てを持ち逃げして消えた
「あ、ああぁああｯｯ！！」
一人きりの部屋に、慟哭が響く
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瑠璃(プロフ) - 軽い気持ちで、寝る前に読んでたら泣きすぎてヤバかったです。バットかと思ったらちゃんとその後もあって救われました。良い作品ありがとうございました！ (2月1日 1時) (
レス) id: 7cf0957e0e (このIDを非表示/違反報告)
だいふく - 久しぶりに感動しました！期末テスト明けだったのでめっっちゃメンタルが回復しました！ありがとうございました！ (9月6日 23時) (レス) @page50 id: 9426ee414d (このIDを非表示/違反報告)
ふふ - 全私が泣いたッッッ!!!もう1リットルくらい涙流した…。もうお゛しあ゛わぜにッッッ!!!!! (6月11日 9時) (レス) @page50 id: bc020e7b09 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - 泣いた。好きいいいいいい ハピエンで終わらせてくれないところがさあああああ (2022年10月29日 23時) (レス) @page50 id: 546cca6b35 (このIDを非表示/違反報告)
春の夜 - ほんと好きです(ごいりょくそうしつ) 貴方様の美しい地獄にはいつも胸を刺されます。 (2022年9月4日 18時) (レス) @page49 id: fac8821556 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2020年11月13日 18時
