【ツイステ】親愛なるタコに呪いを贈る

第37の呪い ページ39

(フロイドside)



「フロイド」


病院の一角にある自販機スペース

その隅で膝を抱え蹲っていると片割れに名前を呼ばれた



ジェイドの手には仄かに湯気が立つ紙コップが二つ





「これを」

「ん…」


気分ではなかったが折角の片割れの好意なので大人しく受け取り、微温のココアを喉に少し流した





「アズール、どうにもならないの？」

「……」


壁に寄りかかったジェイドが飲み物で喉を潤しながら無言で目を伏せた



何も言わない

……そういうことだ






「は、はは…」




アズールが死ぬ






揶揄うと顔を真っ赤にして怒るアズールも、利益に目が眩むアズールも、悪事を企てるアズールも





目的の為に努力を惜しまないアズールも




なんだかんだで俺たちに甘いアズールも







……幸せそうにAを見つめるアズールも






「……全部もう見れないとか、信じられる？」

「………信じられません。受け入れられる訳ないでしょう、莫迦」



ジェイドが紙コップをぐしゃりと握り潰し、飲み残しが溢れて手を汚す


顔を盗み見ると瞳がゆらゆらと揺れていた




「(…あぁ。ジェイドも俺と同じくらい不安定だ)」


冷静を装っていたが、やはり友人の死を前に片割れが取り乱さないわけがなかった





「A大丈夫かな…」

「……」


俺がもう一人の幼馴染の名前を出すとジェイドがピクリと眉を動かした




幼い頃からの付き合いの彼女

最初は"アズールの幼馴染"程度の認識しか無かったAは、悪い噂の絶えない俺たちにも臆する事無く接してきた物珍しい女の子だった


段々興味が湧いて一緒に居ることが増えて、悪戯しても笑って許してくれるような器量のデカさがあった



か弱そうに見えて実は肝の据わった強い人




「でもAにはアズールが居ないと…だってずっと一緒に居たんだよあの二人。今更離れ離れとか耐えられる訳ないじゃん…」



珊瑚の海でも陸の世界でも

ずっとずっと隣合って幸せそうに笑っていた二人だ




「結婚して、まだまだこれからだってのに…」



アズールとAの宝物たちでいっぱいの、海が見える一軒家


時折俺たちが訪ねると嬉しそうに温かく迎えてくれる二人の家庭


これからも沢山の幸せを紡ぐ筈だったあの家で、これからAはたった一人きり生きていかなければならない



アズールの居ない家で、たった独り






虚しさに頭を抱えた






その時





『双子、こんな所に居た』





大好きな声に呼ばれた

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