第35の呪い ページ37
「温かい飲み物を買ってきます」
そう言って双子が病室を後にする
残ったのは私と昏睡しているアズールだけ
二人に気を遣わせてしまった
『…アズール』
＿＿＿＿なんですか、A
いつもだったら直ぐに返してくれる言葉も、もう聞けない
話す時に柔らかく細められる蒼も今は目蓋で閉じられて見えなかった
呼吸は耳を澄まさないと聞こえない程に、か弱い
『デート、行かないの』
冷たい指先を握って眠る彼に問い掛ける
病室は静寂のまま
心音図の高い音だけが響いていた
『アズールのおかげで沢山の人が助かったんだって』
怪我人は居るだろうけど、それでもきっと命に別状はない程度だろう
『アズールは凄いねぇ
魔法石が無かったのにあんな土砂崩れから人々を守ったんだもの』
白い頬を撫で、柔らかい髪を愛おしげに手で梳いた
きっといつもだったら「貴女ならもっと触って良いですよ」と冗談めかして笑ってくれたんだろうな
『…私が、』
手を滑らせて彼の胸にそっと掌を添える
『……私がブローチ付け忘れてる事に気付けてたら、こんな事にはならなかったのかな』
1つしかない心臓が弱々しく鼓動しているのを辛うじて掌から感じ取る
生存競争の激しい海に居たからわかってしまった
＿＿＿＿アズールは、助からない
どうしようもない事実に打ちひしがれて呆然と彼の顔を見つめていた
その時
＿＿＿＿プルルルル
病室に響く着信音
それは私のポケットの中から発せられていた
『……はい』
相手の名前も確認せず応える
そこまでの余裕は最早取り繕えなかった
〔A〕
聞こえてきたのは深く落ち着いた声
『……お父、さん？』
まさか電話口の相手が父だとは思わず私は目を瞬かせる
その安心する唯一の肉親の声を聞いて、私は徐々に己の涙腺がユルユルと解れるのを自覚した
〔A。話をしようか〕
私が鼻をすすり嗚咽を噛み締めていると、お父さんが言い聞かせるようにゆったり話し始めた
〔父さんな、Aが歌ったり話をする度に目くじら立ててた事後悔してるんだ〕
そういえば昔はよく怒られてたっけ
「喋るな歌うな声を出すな」って
〔正直アズール君がお前の声を奪った時は安心した。酷い父親だろう？〕
電話越しの父に『そんなことないよ』と返す
〔こんな事なら、もっと声を聞いておけば良かった〕
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瑠璃(プロフ) - 軽い気持ちで、寝る前に読んでたら泣きすぎてヤバかったです。バットかと思ったらちゃんとその後もあって救われました。良い作品ありがとうございました！ (2月1日 1時) (
レス) id: 7cf0957e0e (このIDを非表示/違反報告)
だいふく - 久しぶりに感動しました！期末テスト明けだったのでめっっちゃメンタルが回復しました！ありがとうございました！ (9月6日 23時) (レス) @page50 id: 9426ee414d (このIDを非表示/違反報告)
ふふ - 全私が泣いたッッッ!!!もう1リットルくらい涙流した…。もうお゛しあ゛わぜにッッッ!!!!! (6月11日 9時) (レス) @page50 id: bc020e7b09 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - 泣いた。好きいいいいいい ハピエンで終わらせてくれないところがさあああああ (2022年10月29日 23時) (レス) @page50 id: 546cca6b35 (このIDを非表示/違反報告)
春の夜 - ほんと好きです(ごいりょくそうしつ) 貴方様の美しい地獄にはいつも胸を刺されます。 (2022年9月4日 18時) (レス) @page49 id: fac8821556 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2020年11月13日 18時
