【ツイステ】親愛なるタコに呪いを贈る

第21の呪い ページ22

「Aッ、Aしっかりしてください！」

『ァ、アズール…』


岩陰に隠れてサメをやり過ごす間も、彼女の腕からは止めどなく夥しい量の血が流れていった

それをせき止めようと僕は泣きながら全ての足でもって傷口を抑え込んだ




「しな、しなないでA」


僕のせいで

僕がグズでノロマなタコ野郎だから



彼女の顔はみるみる血の気を失っていく






『…私は大丈夫よ、アズール』


サメが近付いてくる

ぎらついた牙を剥き出しにして、岩陰に隠れた僕達に向かって突進してきた





あぁ、もう駄目だ

僕達、ここで死ぬんだ



そう、諦めた時だった






『大丈夫、きっと大丈夫よ』

「……A？」


掠れた小さな声

それでもどこか安心する、希望に満ちた瑞々しい声



Aが祈るように目を伏せた







『サメはどっかに行くし、私たちは生き残る


腕もまた元通りになるし、傷跡も残らない』



「そんなわけッ、…………？」



そんなわけない

そう言おうとして、未だ襲ってこない衝撃に僕は首を傾げた



恐る恐る後ろを振り返る





「さ、サメが…」


サメが、急に進路を変えて僕達から遠ざかっていった

今にも食い殺さんとしていた目は興味がなさそうに僕達から逸らされている




「A、腕が…」


それだけじゃない

今の今まで流血していた腕が、僕が一瞬目を離した隙に元通りになっていた



訳が分からず目を白黒させる





『ね？大丈夫だったでしょ？

私の言ったことは絶対なんだよ』



にこにこと笑って彼女は食いちぎられた筈の腕を掲げる

確かに彼女の言った通り、傷跡ひとつなく元の白く細い腕がそこにはあった





「す、すごい！凄いよA！それがきみのユニーク魔法なんだね！」

『……うん、みんなには内緒だよ』


しかし腕が戻ったというのに彼女の顔は青白いままだった




「A……？」

『…すこし疲れちゃった』


そう言って目を閉じるA

静かな寝息が岩陰を満たした




「魔力を使って疲れたんだろう」

その時は本気でそう思っていた


眠る彼女を背負って僕はノロノロと帰路に着く





彼女がユニーク魔法を使うのに寿命を削っていたと知ったのは、それから少し経ってからの事だった









.









.









.









.









.









『アズール』


愛しい人に呼ばれて目が覚める



「A……」


一度は奪った声




だけど矢張り

貴方に名前を呼ばれないのは少し寂しかった

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