第327夜 ページ44
「じょ、常識っ？」
『そう、常識』
米神を痙攣させた女に僕は静かに言葉を被せる
『そう怖がらないで。難しい事なんてない。子供でも分かる、単純な話さ』
石畳を踏みしめ女に近付く
その際、泣きじゃくるトレローニー先生を背に庇うように自然な動作で前に躍り出た
『高さの話だ。高いか低いか、ただそれだけ』
「高さ？」
アンブリッジの警戒は解けず、未だ杖は向けられたままだ
けれどそれに臆する事無く続ける
『そう。例えばアンタはロンドンの時計台のてっぺんに立っているとする』
訝しげに首を捻るアンブリッジに『もしもの話だよ』と釘を刺す
『そこから地面に突き落とされるとしようか』
「……なんですって？」
『仮定の話だよ。そうカリカリしないで
それで、時計台から地面に叩き付けられたアンタはもちろん死ぬ
…あぁ、魔法でどうこうなんてつまらない話はナシだよ』
仮定の話の中で殺されたアンブリッジが顔を真っ赤にして怒りを顕にした
侮辱と捉えたらしい。まあ確かに侮辱してるんだけどさ
『じゃあ今度は中庭の木から落ちた事にしよう。アンタは受け身も取れず無様に地面に落ちる……いやぁ、その体型じゃ軽い身のこなしは期待できそうにない』
顔の真横を閃光が走る
アンブリッジが僕に魔法をけしかけたのだ
横を通り過ぎた魔法がトレローニー先生のすぐ脇をジリッと焦がし、先生が悲鳴を上げた
僕は避けるために傾げた首を戻し、また奴を上から見下ろす
『あれ、怒った？まあいいや
でさ、アンタはどっちが痛いと思う？』
「は？」
『だから高さの話だって。アンタは高い所と低い所、どっちから落ちたら痛いと思う？』
米神と口元を引き攣らせた女が苛立たしげに鼻を鳴らした
『ま、普通高い所だよねぇ。うんうん常識。ほら、何も難しい話じゃなかっただろう？』
「あなたはさっきから何が言いたいのです！！」
苛立つ甲高い声が耳に煩い
僕は軽く肩を竦めてみせた
カンの鈍い奴だ
まあ僕も随分と遠回しに話してしまったし、ちゃんとこの女には教えてあげようじゃないか
『 "高ければ高いほど、落ちた時の痛みは強い"
僕が言いたいのはそれだけだよ』
高等尋問官？
立派な肩書きじゃないか
その分失墜したらさぞ御身は辛いだろう
僕は嗤う
そしてアンブリッジの耳元に口を寄せた
『先生の汚職の証拠、3つ4つ掴んでるんだけど、どうしよっかな♡』
今度こそガマガエルの顔が蒼褪める
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雪乃 - 面白すぎて一気に読んでしまいました…！！話の展開にとてもワクワクしてます！！更新応援してます！ (2021年12月17日 0時) (
レス) id: c79f44231f (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - アロンさん» ありがとうございます…(T_T) 更新頑張ります！！ (2021年12月15日 4時) (レス) id: c7287fd7d7 (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - 卵のたまごさん» ありがとおぉおおおぉおお！！！！ (2021年12月15日 4時) (レス) id: c7287fd7d7 (このIDを非表示/違反報告)
アロン(プロフ) - めちゃくちゃおもしろいです！！更新待ってます！頑張ってください！ (2021年12月12日 19時) (レス) id: ed0e3e5242 (このIDを非表示/違反報告)
卵のたまご(プロフ) - 好きだぁぁぁぁぁぁぁ…！！！ (2021年12月7日 22時) (レス) id: d5144cc3f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2021年9月12日 16時
