第144夜 ページ2
僕はしんしんと雪が降り積もる中庭をぼんやりと眺める
その横を鞄を持った生徒達が通り抜けて行き、風が吹く
今日は冬休みに帰省する生徒達の慌ただしい空気に満ちていた
「A…」
『ドラコ？』
雑踏の中に消え入りそうな声を拾い振り返ると、眉を寄せたドラコがトランクを片手にこちらを窺っていた
『どうしたの？』
「あ、いや…」
歯切れの悪い様子に首を傾げるが、僕は口を挟まずただ待った
「……帰省、しないのか…と思って…」
漸く絞り出した内容は帰省の話
ただそれだけだった
『…うん。今帰るのは、命知らずでしょ』
「け、けどッ…」
尚言い募ろうとするドラコを手で制し、僕は続けた
『父様やルシウスさんに言われたんでしょ？
僕を連れ帰るようにって』
「…………すまない」
『ううん、僕の方こそごめんね。こんなことさせちゃって』
父様達も僕が大人しく帰省するとは考えていないだろうし、ドラコが責められる事はない筈だ
それでもドラコは僕を連れ帰れなかった事に負い目を感じ、自分を責めるような気がした
「あと、A」
『うん、どうしたの？』
また口をモゴモゴさせて押し黙ってしまったドラコを静観し、口を開くのを待つ
「え、えーと…その…あの
＿＿＿＿ごめん！！」
『え？ 何が？』
突如ガバッと頭を下げたドラコに目を剥き、驚く
え、なんか謝られる様なことされたっけ…
「その、色々とだ
忌わしいヒッポグリフの事もそうだし…それに」
『それに？』
もう完全に傷は塞がったし、既にちゃんと謝られてるから気にしなくていいのに
それより、まだなんかされてたのか、僕
「医務室に吸魂鬼が現れたのは、
…僕のせいなんだ」
『……え？』
険しい表情だが罪悪感で押し潰されそうな弱った顔に僕は心配になる
「一匹学校から追い出され損ねた吸魂鬼が医務室に向かうのを、黙って見過ごしたんだ…
ポッターを懲らしめればいいって思って
なのにっ、あの化け物はAを…！」
あぁ、そういうこと
ドラコの独白に漸く合点がいく
『気にしないで
僕が弱いのがいけないんだし』
そう告げるとより悲痛な顔をする彼に、僕はそのまま続けた
『聞いて、ドラコ
君は少し小心者で、傲慢な所もあるけど』
ネクタイを緩め、胸元からある物を引き出す
『僕は君が好きだよ
このネックレスを毎日身に着けるくらいにはね』
胸元で宝石が煌めいた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 631人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
LUNA - マジで想像力やばすぎて尊敬超えて尊敬(？)します。あと、最高すぎます｡ﾟ(ﾟ^ω^ﾟ)ﾟ｡ (7月31日 0時) (
レス) @page50 id: 5340503e64 (このIDを非表示/違反報告)
せそた - 夢魔のくだりから思ってたんですけど、型月ファンもといFGOユーザーですか？！ 透視の魔眼や詠唱がそれっぽくて思わずコメントしちゃいました すっごく面白いです！ (2022年4月10日 23時) (レス) id: 983e14398b (このIDを非表示/違反報告)
牡丹 - BL要素あるならBLフラグ立てた方が良いかと！違反になってしまうので (2020年10月14日 23時) (レス) id: b919622afe (このIDを非表示/違反報告)
ﾆﾉｺｺ(プロフ) - オタクさん» 私も好きです！笑 書いてて楽しいし笑笑 気に入ってもらえて嬉しいです！ (2020年7月4日 14時) (レス) id: 612b09e7e0 (このIDを非表示/違反報告)
オタク(プロフ) - お父さん怖いけど親バカで好き。 (2020年7月4日 8時) (レス) id: 3a06b234dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ﾆﾉｺｺ
| 作成日時：2020年3月27日 18時
