第72夜 ページ27
ダンブルドア先生と暫くチェスをしていると、今まで敢えて存在を無視していたロックハート先生が挨拶という名の横槍を入れてきたので早々にチェスは諦めた
『……決着はまた今度ね、先生』
「ほっほっほ、この場はとりあえずお開きとするかの」
それから先生が立ち上がって「静粛に!」と声を張り上げる
僕もダンブルドア先生に用意してもらった椅子から腰を上げ、長テーブルの端の方へと退けた
…さて、あの人の計画なら、大広間にいる全員があの壁に書かれた文字を見ることになるだろうけど
一体どうなることやら
一抹の不安を抱えながら、僕はゾロゾロと大広間を出て行く集団と共にこの場を後にした
ザワザワとしたどよめきが生徒の群れから発せられるのを、僕はなんとも言えない面持ちで眺めていた
それから壁文字の下、松明の腕木に尻尾を絡ませた猫を見て、まさか最初の犠牲者が猫とはなぁ、と眉を寄せた
今は近くに奴の気配は無いのでひとまず安心だ
ほっと息をついたその時、
「私の猫だ!私の猫だ!ミセス・ノリスに何が起こったというんだ!」
人垣を押し退けて、猫の飼い主フィルチさんが恐怖の余り手で顔を覆いながら金切り声で叫んだ
「お前だな!」
そのままフィルチさんの飛び出した目が猫の近くにいたハリーに向けられ、憎悪の色を見せた
「お前だ!お前が私の猫を殺したんだ!俺がお前を殺してやる!俺が…」
「アーガス!」
騒ぎを聞きつけたダンブルドア先生が、他の教師を引き連れて現場に到着した
先生が取り乱すフィルチさんを宥めるのを見て、僕もとりあえず松明の腕木から外してあげようと、そっと猫に近付いた
茫然自失としているハリー達の肩を軽く叩いて『大丈夫?』と言いながら猫に手を伸ばした
「A…」
「違うんだ、僕達じゃ…」
『分かってるよ』
ハリー達の仕業じゃないことは百も承知なので、安心させるように微笑みを浮かべた
『おや、これは…』
「どうかした…?」
腕木から外した猫を抱えると、猫が息を引き取った訳ではないのが分かり胸を撫で下ろす
『不幸中の幸いだね』
よく状況を分析してみると、近くの女子トイレから溢れ出た水が辺りに水溜まりを作っていた
僕は水面に映った自分の顔を一瞥して、猫をフィルチさんに返した
『大丈夫、この子は死んでない
マンドレイクさえあれば蘇生は直ぐだよ』
何か言われる前に踵を返す
そしてさっさと部屋へと戻って行った
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たると - 誕生日が、一緒だー!!!!!!!!!!!やったー!!!!!!!!!!!!!! (2020年11月22日 18時) (レス) id: 4d06b37767 (このIDを非表示/違反報告)
ニノココ(プロフ) - 雪見だいふく魚味さん» ご指摘ありがとうございます!Miss.とMs.が混ざった謎の新しい単語を生み出してしまいました…笑 修正しておきました、報告感謝です! (2020年2月16日 23時) (レス) id: cf3401d433 (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく魚味(プロフ) - 1つ気になったのですが、第94夜の『Mis,』って,『Ms,』ではないか?と思いました。英語はまだ習い始めたばかりなので,そう言う表現もあるのかもしれませんが,少し気になったので,報告させていただきました。長文失礼しました。 (2020年2月16日 22時) (レス) id: 2d7f9b3bbb (このIDを非表示/違反報告)
ニノココ(プロフ) - オタクさん» ありがとうございます! ハリーみたいに真っ直ぐなザ・主人公もいいけど、ちょっと複雑な主人公も良いですよね!これからも二人の対比にご注目ください! (2019年7月16日 0時) (レス) id: cf3401d433 (このIDを非表示/違反報告)
オタク(プロフ) - 光と闇の主人公同士ですな。素晴らしい (2019年7月15日 2時) (レス) id: 3a06b234dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニノココ | 作成日時:2019年2月8日 21時