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残りの合宿中、私と楓の間にこれといった変化は起こらなかった。
朝起きてこない楓を起こしに行って、練習中はマネージャーの業務をこなして、夜は会議室を借りて同級生メンバーと一緒に自習したり。
当然夜楓は寝てるから、会話も一緒にいる時間も特に増えることもなかった。
だけど…朝起こしに行ってボケボケの楓をこの世界で私だけが知ってるのかと思えるだけで幸せだった。

強豪常誠にイーブンの戦いをして迎えた合宿最終日。
珍しいことに赤木さんが呼びかけて花火をした。

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「楓がこう言う場に来るなんて珍しいね(笑)」
「…風呂からそのまま連行された」
「あはは(笑)」
「…花火なんて小5以来」
「えっ…私も小5以来だよ、花火」
Aの家族と合同でやることが多かった花見だの花火だのスキーだの行事も、Aがいなくなってからは一切興味がなくなった。
だから誰にも邪魔されたくなくて、盛り上がってる奴らから少し離れて線香花火に火をつけた。

「1週間お疲れ様」
「おぅ…」
「いよいよだね、IH。流川楓って選手がついに全国の舞台に立つのか…なんか緊張してきた(笑)全国には仙道さんより上がいるかもしれないんだもんね。あぁ〜ワクワクする…」
「別に…俺はAがいてくれさえすれば、どんな奴にも負けねぇけど」
「…今、私のこと名前で呼んだ?いっつもお前とかこいつとかてめぇなのに…」
「…るせー」
数年ぶりの花火に浮かれたんだよ。
俺を信じてそばにいて応援してくれるお前の存在が嬉しいだけだよ。
だけどそんなこと死んでも口にできないから、代わりに短い言葉にして照れ隠しに欠伸をした。

「A、俺絶対日本一の高校生になるから」
「…楓なら絶対なれるよ‼︎」
「なら、絶対俺についてこいよ」
「…う、うん‼︎」

この言葉通り、Aは東京に戻ってからは俺が朝起きてから寝るまでずっとサポートしてくれた。
明日6時と言えば家の前で待っててくれて、そのままAをママチャリの後ろに乗っけて学校へ行き、早朝自主練の間のパス出し、夕方自主練をした後の掃除や片付けまで全部やってくれた。
俺が起きてる間はバスケだけ考えられるようにと。
まさに一緒に戦ってると言う言葉が似合うほどに。

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作者名:ぎゅりこ | 作成日時:2023年2月27日 20時

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