包帯の下の傷痕【太宰治】

02.包帯を手に ページ3

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「すみません...痛かったですか..？」



私の首に包帯を巻きながら謝る彼女に、私は微笑んだ。「少し、痛いかな」嘘を吐いて微笑むと彼女は先刻の強引さは消え失せ、真っ青な顔で慌て続ける。


噫、面白い。私の言動に振り回される彼女が実に面白い。先刻まで欲に駆られて、私の血を獣のように欲していたのに




「君は面白いね。」



そう云って頭を撫でる。
私たちの関係は是位が矢張り丁度いいのだ。そう再確認してまた微笑んだ。



「面白い...なんて、初めて云われました。」



世界から除外された云わばバケモノと云う人種に属す彼女は寂しげに微笑した。けれど矢っ張り自然に微笑んだ時のような可愛らしさはなくて


欲に駆られたあの時とまったく違う儚い彼女の頬に手を添え、口端に少し付いている血を舐めとった。


矢っ張り不味い。之が美味しいなんて、不思議だなぁ。なんて思いつつ給油室の壁に凭れた。






「あと...これ、鉄分を多く含む食材を多く使った約束のお弁当です。...貧血には、気をつけてくださいね？..って、原因の私が云うことじゃないですよね...すみません」




幻覚だろうか。犬耳を垂れ下げたAちゃんが見える。私は約束の弁当を受け取り、あの約束の日を思い出す。

弁当作ってきてなんて一年前にした約束なのに、よく守り続けるなぁ

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