暗黙の奴 隷 ページ2
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夢を観た。
ボクが一番嫌いな、前の世界での記憶。
「黙っていなさい」
「君は何も見ていない」
「見て見ぬ振りをしなさい」
くだらない脅し文句ばかりの日常。
周囲に恵まれなかった。そう言ってしまえばそこまでの、無為で無駄な呪文。
同じ顔の異形達が口を揃えて、「空気を読め」と私を抑えつける。
そんな事知らない。悪を悪と言って何が悪いの。そう言えたら、幸福だったのに。
言える筈がないんだ。私は無意味な奴 隷だから。強要製の手枷を着けて、落胆製の鎖に繋がれて。命じられるままに口を噤むだけの、面白くも何ともないごっこ遊び。
私を共犯者に仕立てあげて、裏切れない様にしたい。あの人達の意図はそういう事なんだろう。私という存在は、利用価値の高い人形。言われるままに頷いていれば良い。
兄弟姉妹は普通にはしゃいでいて、その癖「もっと遊びたい」だとか「あれ買ってこれ買って」だとか。ふざけないでよ。私ばかり大人の中に放り込まれて、どうしてこんなに苦しめられるの。そう言いたいのに、許可無しの発言は握り潰される。叱られて、手枷を頑丈にされて終わり。
壊れてしまえ。終わってしまえ。全て焼け焦げてしまえ。
こんな世界、大嫌いだ。一部の人にばかり苦痛を強いて、その他大勢は呑気に欠伸をしながら生きている。
ああ、また、日が沈む。
悪を照らす陽は消し去られ、悪を覆い隠す闇が覆い被さる。
私という存在も、大人達という夜に呑み込まれて、塗り替えられてしまう。
死んでも地獄行き。そう思う、それだけの理由で、私は死を望まない。
恨めしいこの世界に、気味の悪い命を落として。
ああ、さっさと、砕け散れば良いのに。
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