血縁の奴 隷 ページ1
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夢を観た。
随分昔の、俺が最も嫌悪する記憶だ。
「もっと努力しろ」
「誰にも敗けるな」
「全てで頂点を取れ」
そんな言葉は、もう聞き飽きた。
生まれが悪かった。そう言ってしまえば簡単に納得出来る呪文の数々。
同じ顔の醜い化け物が口を揃えて言うのは、「一番を取れ」。
知るか、そんな事。俺は俺だ。そう言えたらどれだけ幸福だったか。
言える訳もないんだ。俺はただの奴 隷なのだから。脅迫製の首環を着けられて、諦念製の檻に閉じ込められて。命令されるままに演じているだけの、馬鹿げた人形遊びだ。
俺は「ハーデンロイズ家の後継者」であって、「ルカ・ハーデンロイズ」ではない。つまりは、そういう事らしい。
弟達は比較的自由な癖に、「勉強が面倒」だの「訓練がつまらない」だの、思い思いの文句を並べ立てる。俺の前で。何度も何度も腹が立って、殴りたくなった事も数知れず。しかし、それをすれば叱られるのは100%俺だけだ。折檻部屋に押し入れられて、丸1週間食事抜きかもしれない。
何故俺ばかり。そんな事は考えない。考えてはいけない。
自分を憐れんだ瞬間から、世界はただの理不尽に堕ちる。それは嫌だ。俺は、例えこの身を利用されようと、世界を恨みたくはないから。
ああ、また、夜が明ける。
明けた夜は忘れ去られて、強く輝かしい朝に塗り替えられる。
俺という存在も、ハーデンロイズという太陽に覆い隠され、焼き尽くされる。
死にたいとは思わないから。たったそれだけの理由で息をする。
愛しいこの世界に、忌まわしい命を燃やして。
ああ、さっさと、燃え尽きてしまえば良いのに。
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