笑う為の嘘 ページ2
今日は宴の日だ。
カナモスの第2部隊の策略を退けて、全員無事だった事を祝う宴。
俺はその場にいなかったから人から聞いた話だけど、どうやら氷我君の作戦が上手くいったらしいね。どうせだから、少し話しに行こうかな。
彼の事だから、今も食堂の隅の机にかじりついて新しく思い付いた戦略でも書き綴っているんだろう。
壁伝いに彼を探せば、扉から1番離れた隅の方で、予想通り机に向かって紙を広げていた。ただ、誰かから押し付けられたのか、机には深紅の液体が入ったグラスもある。まあ宴だからね。お酒を飲むのは普通か。
「やっほー氷我君! 今日も相変わらず格好良いね!」
「ノーリさん。どうかしましたか?」
明るく声を掛ければ、彼はペンを置いて顔を上げる。ちゃんと手を止める辺り、礼儀正しい子だと思う。
「別に何もないよ? 暇だったから来てみただけ! おっ、それ新しい作戦書!?」
「ま、待って下さい。これはまだ未完成ですから」
「えー! ……じゃあ待ってる! 終わったら見せて!」
氷我君の向かいの席に座って、きょとんとする彼を眺めてニコニコと笑う。変な人を見る目をされたけど、諦めてまたペンを取り、紙にさらさらと字を綴り出した。
純新無垢なこの
――また規則違反の魔法使いかい?
兄様から貰った【敵対者感知】のブレスレットが反応する。神樹の浄化域内に魔法使いが入ってきた証だ。ほんの数週間前にも来たばかりだと言うのに、また規則違反者か。カナモスの秩序はどうなっているんだい?
氷我君に他の人を見てくると言ってその場を離れる。不思議そうにはしていたけど、いつもの事だから気にしていないみたいだ。
宴にはしゃぐ人達の間を潜り抜けて外に出る。
10km先まで行けるのか、って思った? ちゃんと兄様に【特定座標転移】の指環を貰っているんだよ。敵対者と3km離れた所に転移する様になっている。
さぁて――どう料理してあげようかな、ふふふっ。
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