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夢の諦念 ページ4

僕達双子も、無事に6歳になった。でもね、何だか周りの人達が怖いんだ。無法者、無法者って、僕達を見て騒ぐんだよ。
雪兄に聞いたら、無法者っていうのは、皆のように魔法が使えない無能力者のことなんだって。
つまり僕達は、異常者(ゴミ箱行き)になっちゃったらしい。

父さんも母さんも、僕達にとても酷くするようになった。僕も叩かれたり蹴られたりしたし、雪兄も殴られたり踏みつけられたりした。雪兄が傷付くのを見てると、自分の奥底にどろどろしたものが溜まっていくみたいだったけど、それを表に出したら大変な気がしたから、何とか我慢したよ。それが"憎悪"だって気付いたのは、もう少し後の事だけど。

雪兄は僕に、逃げようって言った。
ここにいれば、僕達は悪意に殺されるって。
雪兄が言うなら、僕はどこにだってついて行くつもりだったから、すぐに頷いたよ。でもね、びっくりしたなぁ。雪兄、泣きそうな顔で言うんだもん。
家族と離れるのが悲しいのは分かるよ。どれだけ酷くても、家族だから。
それでも雪兄は、僕達が生き残るために悲しみを押し殺すんだ。

2人で逃げた。遠く遠く、魔法使いがいない所まで行こうって。誰も僕達を傷付けない所まで行って、2人で暮らそうって。

……でも、そんなのはただの理想だった。
この世界のどこにもそんな所は無いんじゃないか、っていうくらい、どこまで行っても魔法使いだらけだった。無能力者は嫌われる。無能力者は殺される。それが、世界共通の常識で、規律。

雪兄は日に日に暗い目をするようになった。元の澄んだ黒色がどんどん濁っていくのが、僕には耐えられなかった。

「雪兄。大丈夫だよ。誰に何を言われたって、僕は雪兄と一緒にいるから。一緒に幸せを探すから」

雪兄は、泣きそうになりながら、ありがとうって言った。
良かった……濁ったのがちょっと無くなった。雪兄はいつでもかっこいいけど、やっぱり澄んだ目が良いよね。

いつか、雪兄の目が淀むことがないような……そんな、理想郷を見つけてみせる。

それが、僕に出来る、雪兄への恩返しなんだ。

雪の放浪→←雪の諦念



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東雲 祀(プロフ) - 菜の葉さん» なるほど、"Agno Mageia"から少年隊に訂正しておきますね! ご指摘と応援ありがとうございます! (2019年7月21日 12時) (レス) id: 34b4d8e6b5 (このIDを非表示/違反報告)
菜の葉(プロフ) - 面白いです…! 思っていた通りの世界観が、想像以上に美しく、カッコよく書かれている…! 細かいことを言うのなら、試験はアグノマギアに入るためではなく少年隊に入るためのものですが、そこはまぁ解釈の違いということで! 更新頑張ってくださいね! (2019年7月21日 12時) (レス) id: 8971b2ec5c (このIDを非表示/違反報告)
十六夜月姫(プロフ) - おっさんが…うちのおっさんが…かっこいい……!ありがとうございます…!!お借りしたのを見ました…!おっさんの物腰柔らかな雰囲気が的確に出ていてかっこよきです…!ありがとうございます…!! (2019年7月21日 1時) (レス) id: 876f512bd1 (このIDを非表示/違反報告)
東雲 祀(プロフ) - 菜の葉さん» お褒め頂き、ありがとうございます! リンクの件、よろしくお願いします! (2019年7月20日 0時) (レス) id: 34b4d8e6b5 (このIDを非表示/違反報告)
菜の葉(プロフ) - 双子それぞれの個性ある語り口がいいですね! こちらの作品を、『リンク集』の方に貼らせていただきますね! (2019年7月19日 21時) (レス) id: 8971b2ec5c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:東雲 祀 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年7月19日 19時

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