>>策士な彼女 ページ44
「今日放課後ゲームしよーぜ」
「俺今日委員会だからパス」
キヨが友達と話す声が聞こえる。委員会か。久しぶりに一緒に帰りたい。ふとそんな考えが浮かんで、キヨには気付かれずに一緒に帰る方法を頭が計算し始める。委員会。夕方。特別感。ひとつの光景が導きだされてから、教科書を取って寝た。
放課後の教室。いつもは帰ってしまうから見慣れない空っぽの教室に、黒のリュックが置いてある席を見つけて座る。委員会に従事する真面目な彼氏さんの席だった。
その席に座って、委員会から帰ってくるキヨを待つ。寝てる彼女を置いていくほど、キヨは鬼畜じゃない。私が残っていることに疑問は抱くだろうが、私が一緒に帰るために残っていたことはあのキヨでも気づけないはず。何個か出した案の中で一番労力が少なくて済むのがこれだった。
「……A…諦めて…置いてくぞ？」
「……ぅん。キヨじゃん、おはよ。あと、委員会で一緒に帰る人がいないぼっちの彼氏を待ってた健気な彼女さんにその台詞は禁句だよ」
「寝心地が良かったから枕にしてるようにしか見えねぇんだけど？」
いつの間にかリュックを枕にして、寝ていたらしい。さすがに引かれたかなぁと思ったけれど、無意識のうちに私の髪を弄っているのを見て杞憂に終わったことを知る。
眠気を払うためにグッと伸びて、手を突きだす。その手は当たり前のように少し乱暴引かれて、そのままずるずると玄関まで引きずられる。放っておいたら動かなくなるとでも思っているのだろうか？
自分で下駄箱から靴を出して、いつもより軽く感じられる足で、信号ひとつ渡るだけで着く家までをキヨと帰る。
「なんで今日残ってたんだよ。家かえったらふかふかのベッドあんじゃねぇの？」
「(キヨと帰りたい)気分だよ」
そんなのは私のキャラじゃないから少し誤魔化すと、『じゃあな』と繋いだ手をほどかれる。
こういうときだけこの距離が恨めしい。超省エネ思考の私にそんな風に思わせるなんて、やっぱりキヨは予想外で飽きない。だからこそ、明日は君を私の手のひらで踊らせたい。
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#怠惰 #合理性 #乙女心
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作者名：涙(るい) | 作成日時：2021年2月1日 7時
