>>陽な彼女 ページ37
「一目みたときからAが好きでした。俺と付き合ってださい」
「なんだそのやる気のなさわっ。却下。乙女の心を学び直してから出直してこいや！」
思わぬ返答に、俺も友人も理解するまで３秒かかった。俺出直さなきゃいけねぇの？嘘だろ、おい。
嘘ってやっぱ軽々吐くもんじゃねぇわ。これは戦犯のあいつが甘んじて受けるべき。そう思ったのに、あいつはもう居なかった。
「どうせ嘘コクでしょ？乙女の心を弄んだ罪で合格するまで出直せっ」
「合格ラインは──俺のキュンッ♡」
……本当に性格が残念すぎる。なんか少し漂うおっさん感はどうにかならないのか。告白に対する返事はもちろんわかんねぇし、嘘コクする相手を間違ったのか合っていたのかさえ分からない。ただ分かるのは、とてつもなくめんどくさいオチがついたことだ。
それからずーっと俺の告白磨きが始まった。
『女子が憧れる告白シチュエーション』
『言われてうれしい告白・プロポーズ』
で履歴が埋まったのは思い出したくもない。放課後教室に呼び出すのも屋上での告白も全部やったが、1年たった今でも合格は出せなくて、クラスのやつらはAの狂い具合と嘘コクの怖さを知った。知れば知るほどAは残念な奴で、それでいて美少女だった。
「今日も不合格っ！今日で不合格連続記録400回。だからカフェ行くよっ」
「俺とラテより甘い恋しねぇ？」
「盛大に迷ってるね〜」
Aの歩幅に合わせて下校する。記念どうこうよりも男女ペア限定フルーツパフェが目当てなのは、1年間告白を続けた俺には火を見るより明らかだった。
恋の対象とはたくさんの横顔を知っている人のことだと聞いたことがあるが、俺はAの顔を真正面から誰よりも知っている。笑顔も泣きそうな顔も怒った顔も、全部全部。果たしてこれはどんな名前の感情なのだろう。
ぐるぐる考えた末、あんまり乗り気じゃねぇけど、電車に乗った途端男どもの視線を集めた俺一美少女の男避けになってやる。サブバックを肩代わりしてやりつつ、俺と電車のドアとの間に匿って顔を寄せて聞く。
「今のキュンッってしただろ？」
「キュン以前に私をオカズにしようとしたあいつら抹殺したい」
「早まんな。あと普通にここ公共の乗り物の中だから自重しろ」
「あーい」
──嘘の告白を重ねるうちにどれが嘘だか分からなくなったのは、合格が貰えるときまで俺だけの秘密だ。
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#キュンッ♡ #宇宙一 #地獄(天国？)の罰ゲ
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作者名：涙(るい) | 作成日時：2021年2月1日 7時
