バカな彼女 ページ32
放課後、俺の部屋。目の前には髪の毛を肩らへんでバッサリ切り揃えった少女が正座していた。机上に赤色の流星群が目立つ答案が並べられていて、点数部分は四角く折られている。
「ワット ドゥー イッツ セイッ？」
「itはdoesだし、発音がごみなんだよ」
これは何を言いたい？とか意味わかんないし、テストの点ならチラッと見えただけだけど俺も沈黙しか出来ねぇ感じだったぞ。
少しの沈黙のあと、キヨの耳 is ワローング、と意味不明な反論をされる。ワローングってWrongのことか？俺の耳よりお前の発音の方が早期解決が必要だと思うのは俺の気のせいか？
目の前の女のせいで奪われた俺の平和なテスト明けに思いを馳せながら、テストを抜き取る。
「なんこれ。Aだけ特別使用だったりしねぇ？」
「点数の部分を5回くらい見直すの止めよう。それとも見えないの、老眼？」
頭は悪いのに回転はある程度早くて苛立ちが増す。だって平均65以上のテストで32って。Aがテスト前の放課後図書室に残ってたの俺見てたんだけど幻覚だったりするのか。
38とか50以下の点数が並ぶなかで78を見つける。教科は現代文。まさかと思ってAを見ると、へへっと笑われた。
「図書室面白い本ばっかでさ。ちょうど読んだ本が出たの」
問題がわからなくて暇潰しに読んだ本が出題されるとかチートかよ。目を輝かせて本を読んでるAが目に浮かんでため息をつく。
「てことでキヨ様、ダッツ3つで手を打って頂けないでしょうか？」
「答え見せろってか？」
「……解けなかった問題全部教えてほしいとか思ってたんだけど」
あまりの出来の悪さに解答を剥奪されるという不名誉な歴史を生み出したことは噂で聞いていたから、解答を強奪しに来たのかと思ったらこのお返事。こいつは真っ直ぐだから困る。こんなお願いされたら断れるわけねぇじゃん？
「……はぁ、早く教科書開けよ」
「センキュー！」
まずこの発音どうにかしねぇと、永遠に英語の点数あがんねぇよな。やること多っ。易々と俺の時間を強奪するAに内心舌を巻きながらAと同じテキストを覗きこんだ。
『気付けば、手の動きに合わせて揺れる髪の毛と真剣な顔に見とれていて、なんか負けた気分になって腹立つから、次は平均点のせろよ絶対』
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#バカ #期末試験 #浪人の危機
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作者名：涙(るい) | 作成日時：2021年2月1日 7時
