8本目 ページ10
「つまり本人すらどうにも出来ないから、俺に消してほしいと」
「は、はい……お手数お掛けして申し訳ございません」
爆豪勝己、君も何とか言ったらどうなんだ。
「一応やってもいいが、聞いた話だとそう効果は無いと思うぞ」
先生の髪が逆立ち、目が赤くなる。縁は空気に溶けるように消えていった。まじか。
「ありがとうございます……！！」
「ッス」
「別に……用が済んだんならもう帰れ」
失礼しました！ と元気良く職員室を後にする。左手の小指にはもう、縁は結ばれていなかった。思わず安堵の息を吐く。
「それじゃ、ご迷惑お掛けしましたさよならー！」
何かを言われる前に、逃げるように爆豪勝己から離れていく。用事が無いなら、ああいう人は本来苦手なのだ。私は普通科、彼はヒーロー科。そもそも交わること自体が無いのだから。
それにしても相談してみるものだ。ヒーロー科の先生、相澤先生といったか。見た目より怖い人じゃなかったし、ちょっと無愛想だけど。あれだよ、大人の魅力ってやつ。いや、個性を消す個性なんてあるんだなー。相当珍しいんじゃないかな、初めて聞いたよ。お母さんだってきっと知らなかったから赤い糸は消えないだなんて教えてくれたんだろうな……。実際消えているわけだし、もういいんだけど。
別に運命の相手でなくとも良い人はいるわけだし、そもそも赤い糸の存在なんてここ数年気にしてなかったから消えたところでって話だ。すっかり安心した私は足取りも軽く家路へついたのだった。
そういえば中間試験まで1ヶ月切ったかな。範囲は狭いけれど、中学と違って同じくらいの成績の人が集まっているから油断したらあっという間に成績が落ちてしまう。ノートとか纏めはじめなきゃ。
＊
翌日朝、廊下で他クラスの友達と話している時だった。爆豪勝己がすぐ横を通り過ぎる。何か言われるかもしれないと一瞬身構えたが、その心配は無かった。私など見えていないかのように歩いていき、私はどこか安堵を覚えた。
その直後。またピン、と軽く何かに引っ張られるような感覚がした。なんとなく嫌な予感を察知して、恐る恐る自分の左手を見る。刹那、喉から空気が漏れるような悲鳴が出た。
友達に１言断ってその場から逃げるように自分の教室へ向かう。どうして、と頭を抱えたくなるような心境だった。
見間違えてなんかいない。確かに、赤い縁が何事も無かったかのように復活していたのだ。
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廿楽(プロフ) - くまめとろさん» 復活しました。待っていてくださってありがとうございます。コメントも感謝致します。 (2021年9月16日 1時) (
レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞乃さん» 長い間放置していて申し訳ありません。また読んでいただけると嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 朧月さん» お待たせしました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
くまめとろ(プロフ) - 更新の通知きてびっくりしました…好きなので嬉しいです (2021年9月1日 21時) (レス) id: b5e5ff3f06 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 更新させてて叫んでしまいました……！ありがとうございます(；；) (2021年8月25日 12時) (レス) id: e6a7fa3ebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月25日 15時
