4本目 ページ6
「今日何か顔色悪くない？」
「ちょっと、全然切れなくて……」
「切れ……？ 大丈夫？ 保健室行く？」
大丈夫と死にそうな声で答えると、本気で心配した顔のまま友人は自席へ戻っていった。小指を睨みつけると、やっぱり真っ赤な意図のようなものがその存在を主張していて、憎たらしくなった。昨日は家中の刃物という刃物を使って糸を切ろうとしたが、結果はどれも惨敗。切っても切っても縁をすり抜けて空を切るだけで終わった。
そんなことを続けていたら寝たのが夜中3時過ぎだったのだ。お陰で体が怠い上に鈍い頭痛がする。そんなのが1日続いたのだから、6時限目が終わっても机に突っ伏したままなのは許してほしい。
「ゆ、ゆゆ、結縁さっ！」
いつもは大人しめの女子から名前を呼ばれ、顔だけそちらへ向ける。口に手を当ててあわあわしながら、震える指先で自分の向かい側……つまり私が今顔を向けている方と逆側を指していた。何事だ、そんな幽霊が出たみたいな顔をして。
「おい」
声を聞いた瞬間、体感温度が10度くらい下がった気がした。クラスの人間じゃないことは明白だった。加えて、体育祭の選手宣誓や授賞式の時に聞こえた低めの声。そちらを向くのが怖すぎて恐る恐る左手の薬指を見ると、糸がピンと張っていた。
そこからは早かった。ノータイムで鞄を持ち、逃げようとしたがあっさりと肩を掴まれ、半分引き摺られながら教室を出た、というか出された。クラスメイトは皆「ドンマイ」みたいな表情で、中には合掌までしている奴もいた。待て、死んでないぞ？ まあ人が人だ。クラスの皆が何も出来ないことに関してはどうとも思わない。合掌は酷いけどな。うっすらと死を覚悟しつつ大人しく引き摺ら……引っ張られていった。
そうして着いたのは人気の無い中庭。もうこれ完全に殴られるやつじゃないですかーやだー。なんて心の中では言えるけど実際冷や汗止まらないです。とりあえず何かしら喋って。いや、私から話せばいいんだ！
「あの」
「あ"ぁ"？」
無理！！ 誰だよ自分から話せとか言った奴。私だよ！ ごめんなさい1人ツッコミでもしてないと正気が保てそうにないんです。だって待って、想像を絶する目つきの悪さと腰パンだよ？ 見た目だけでいえば不良のソレに、私みたいな一般生徒はただただ怯えるしか出来ないわ。
「これ、てめェの個性だろ」
そう言って掲げられた小指には、真っ赤な糸。え、待って？
「視えるんですか……？」
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廿楽(プロフ) - くまめとろさん» 復活しました。待っていてくださってありがとうございます。コメントも感謝致します。 (2021年9月16日 1時) (
レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 瑞乃さん» 長い間放置していて申し訳ありません。また読んでいただけると嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 朧月さん» お待たせしました！喜んでいただけて嬉しいです。 (2021年9月16日 1時) (レス) id: 3ef6add51e (このIDを非表示/違反報告)
くまめとろ(プロフ) - 更新の通知きてびっくりしました…好きなので嬉しいです (2021年9月1日 21時) (レス) id: b5e5ff3f06 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 更新させてて叫んでしまいました……！ありがとうございます(；；) (2021年8月25日 12時) (レス) id: e6a7fa3ebe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月25日 15時
